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レイラ夫人の提案で晩餐までの間、夫人とティーナと私は、公爵家の温室でティータイムを楽しむことにした。
「ティーナ元気だった?あれから学院で会えなかったから心配した。」
「ありがとう。元気で過ごしていたわ。リル、私、あなたに謝らないといけないの。」
ティーナはしっかりと私の目を見て話し出した。
「今回のこと、お父様にお話したのは私なの。今までの自分の気持ちをお父様に伝えてしまったの。私はね、いつかこの公爵家支えていくんだってずっとそう思っていた。そのために沢山努力してきたわ。だから私にとって属性転化は絶望的だった。自分にはもう価値が無いような気になっていたの。」
属性転化が起こったティーナは必死でもがいていたのだろう。初対面に近い私に助けを求めてしまうほどに。
「リルのおかげで、私、やっと今の自分を受け入れられるようになったの。だからどうしてもお父様とお母様に謝りたくて。貴女に頼まれた空気浄化魔法が出来た時、全てをお話したの。ごめんなさい。私、自分の事しか考えてなかったわ。リルは、両家を巻き込まないようにしてくれていたのに。」
ティーナはゆっくりと私に頭を下げた。まるで罪を懺悔するかのように。
でも、私は。
「ティーナは1人で空気浄化魔法を作ったの?私も手伝うって言ったのに?ずっと学院も休んで?」
「リル?」
「私、凄く心配したよ。連絡もないから。でもきっとティーナは頑張ってるって思ったから待っていたの。ティーナ、私達は友達だよ。今度は何でもいいから相談してね。」
今回のことは、自分の責任。たとえティーナが公爵に話していなくても結果は同じだったと思う。
「リル、私の事怒っていないの?」
「そんなの当たり前でしょう。」
ずっと平静だったティーナの顔が歪み、瞳から大きな涙がこぼれ落ちた。
「ありがとう。リル。」
夫人が優しくティーナの背を撫でていた。
それから夫人とティーナと穏やかな時間を過ごした後、私とお父様は晩餐の席に招待された。
晩餐では、仕事の話をすることはなく、レイラ夫人の気遣いにより、楽しい時間を過ごす事が出来た。
「お父様、公爵様との話し合いは纏まりましたか?」
公爵家からの帰り道、馬車の中で私は少し気を緩め、お父様に尋ねた。
「うん。まだ細かい調整はあるけど、正式に契約は成立したよ。」
「そうですか。ありがとうございます、お父様。」
「それでね。これからリルを支えてくれる人材を確保していこうかなって思ってるんだ。」
「どういうことですか?」
人材確保と言われてもよく分からない。
「今までは、リヴァンとレイズとリルだけで何とかやってこれたけれど、これからはそうはいかないからね。」
私はこれから信頼できる人達を増やしていかなければいけない。
「はい、お父様。」
お友達もできた私ならきっと大丈夫なはず。
私は、大切な研究室がもっと暖かな場所になることを願った。




