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301/308

*ウィルフレイ視点 17

自分は今、どんな顔で笑っているのだろうか。

きっと、それはそれは歪んだ執着を露わにした醜い笑顔を見せているんだろうな。


目の前にいるリルの半身は、強がってはいるけれど、動揺を隠せていない。



可哀想に。

君は今、私の発言で頭の中が混乱しているんだろうね。

長く共にいたリルだって、こんな醜い私を知らないはずなのだから。

いや、私だって知らなかった。

リルにこんな歪んだ愛情を抱いていたなんて。

でも、ごめんね。

もう、止まれないんだ。

リルを逃してあげるなんて、出来ないんだよ。





私は、先程理花の手から流れてきた魔力を思い出す。その春の日差しのような心地良い魔力は、いつもリルから感じていたものだ。

私にとって、正しい道標。

だから、大丈夫だ。



「私は自分の本質を良く分かっているから、大丈夫だよ。だから、見てて。」

私は理花に顔を寄せ、そっと囁く。

そして、手の内にある柔らかな魔力を握りしめた。




閉じた瞼に唯一浮かぶのは、リルの姿。


私は、彼女を守り抜く盾になりたい。

彼女が進む道を切り開く剣になりたい。

そして、彼女を癒す花のような存在になりたい。



でも、それだけじゃ駄目だ。

リルを繋ぎ止め、囲い込む檻が必要だ。

彼女が幸せに、私とだけ過ごせる檻が。




私の迷いのない答えに、ずっと凪いでいた自身の魔力が応える。



ああ、この何もない真っ白な空間は、今の私の深淵だったのか...。


この虚無の世界に、私はすんなりと納得出来た。

 


そうか。それは、丁度良い。

それなら、ここからやり直そう。

初めから作り直そう。

自分が望むままの力を。




リルの道標通りに、自分の中の魔力に触れると、私を中心に大きな光の輪が現れた。

その輪の外で、植物の芽が一気に芽吹く。そして、それは天井を隠す程の森に成長した。木々から舞い落ちる葉が、光を散らしながら床に積もっていく。


その光景を、ここだけ開けた円の中から、私と理花は静かに見守っていた。



「...綺麗。」

理花が漏らした小さな声には、賞賛が含まれているのを感じた。


彼女からの賞賛は、純粋に嬉しい。

でも、これはリルを捕えるための力なんだよ。

君はいつ、それに気付くのかな?



そんなどす黒い欲が、私の魔力に伝わる。


すると、木々の根元から新たな芽が顔を出した。

小さな双葉をつけた芽が、天を向き成長を始める。その細い茎が、近くの木の幹に絡まりながら、上を目指していた。



木々に纏わりつく蔦は、私の欲望。

リルに対する私の執着。



やがて成長しきった蔦に、沢山の蕾が生まれた。



「これで、完成だよ、リル。」


蕾が一斉に綻び、光輝く白い花を咲かせる。光を纏うその白は、リルの美しい白銀の髪に似ていた。




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