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7-54

私は肩の痛みに堪えて、ウィルの中に魔力を流す。

細い糸を垂らすように奥へ奥へと進むと、ウィルの光属性の魔力に絡みついた赤が抵抗を始めた。



「くっ...。リ、ル...、リル、リル...。」

ウィルは苦痛に呻きながら、何度も私の名前を呼んだ。

ウィルの瞳からは、いく筋もの涙が流れ落ちる。




「大丈夫、大丈夫よ、ウィル。必ず助けるからね。」


私は、ウィルに流す魔力を徐々に強めた。



ウィルは絶対に渡さない。

こんな魔力に、私は負けない。



赤い魔力の抵抗を抜け、更に奥へと進む。

そしてやっと、私の魔力がウィルの魔力の根元に触れた。



不思議な感覚だった。

ウィルの中は、光属性の魔力が泉のように湧き出ているのかと思っていた。

でも違ったのだ。

ウィルの魔力の根元は、光を纏う植物の群生地だった。

力強い生命力に満ちた植物が、天に向かって伸びている。



そうね。こちらの方が、ウィルらしいわ。

貴方は、ちゃんとリングドンの血を受け継いでいる。

だって、リングドンの豊かな地をしっかり体現しているもの。



私は、光り輝く森に、精一杯の浄化魔法をかけた。



ここに、世界の力はいらないの。



私の魔法は、ウィルの中から綺麗さっぱり、赤い魔力を消し去った。



良かった...。

私、ちゃんとウィルを守れた。



ウィルの中から世界の魔力が消えると、私の魔力も同時に飛散していった。






「お嬢様!メリアお嬢様!」

気付くと、私はライに抱えられていた。

ライの瞳から落ちた涙が、私の頬を濡らす。



「リルメリア、動くな!今、傷を塞ぐ!」


「私も手伝おう。女神様、大丈夫ですよ。」


「ならば、私はこちらを。リルメリア嬢、しっかりするんだ!」


みんなの声は聞こえるのに、意識がはっきりとしない。

血を流し過ぎたのか、体も酷く重かった。




「うっ...。」

忘れていた傷が、今になって焼けるように痛んだ。

でも、その痛みが私の意識をギリギリの所で繋ぎ止めている。



「ウィル、は?」

ウィルはどこ?


私の口から、掠れた小さな声が出た。



「大丈夫だよ!ウィル君も無事だ。全て終わったよー。頑張ったね、リルちゃん。さあ、みんなで帰ろう!」


「はい、先生...。」

良かった...。


安堵と共に、私の意識は急速に薄れていった。








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