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7-52

ダンジョンは力を失い、その恩恵はもう受けられない。

でも、そのおかげで通常の転移魔法でも脱出出来る。

私の魔力残量は少ないけれど、ルーイ先生と協力すれば、あと一回転移魔法は使えそうだ。



「ウィル、ここから出ましょう。私の肩に捕まって。」

まだ意識が朦朧としているウィルの体を支えて、ルーイ先生の下へ向かう。

少し離れた所で、ルーイ先生が転移用の魔法陣を準備していた。



「ウィル、大丈夫?もうちょっとだから頑張って!」

魔力枯渇を起こしているウィルの体は、冷たい。ウィルの瞳も虚ろだった。



早く戻らなきゃ。

早く、早く!

気持ちばかり焦っても、距離が縮まらない。


その時、私の肩に掛かっていたウィルの体重が軽くなった。



「ウィル?」

ウィルが足を止め、私の肩から腕を離す。



「ウィル、どうかしたの?どこか体が...。」



「リルちゃん!」


ルーイ先生が叫んだのと同時に、ウィルの両手が私の首を掴んだ。

その手に、じわじわと力が入る。



「ウ、ウィル...。クッ...。」


息が出来ない。

頭に血が上って、目の奥が熱い。


どうして、ウィル。



俯いていたウィルが、ゆっくりと顔を上げた。その虚ろな目と私の目が合う。



「ウィル、そ、その目...。」


ウィルの瞳が、ダリア様と同じ、血のような真紅に染まっていた。




「女神様!」

ゲイツが剣を片手に、こちらに向かってくるのが見えた。

けれど、途中で見えない壁に阻まれてしまった。

ルーイ先生とアルバス様が放った魔法も、壁によって飛散していた。




「その、力は、あっては、ならない。ここで、消す。」

ウィルの口から、明らかに人とは違う、性別すら分からない声が漏れ出る。

そしてウィルは、私の首を躊躇なく締め上げた。



「ウィル、駄目、よ。気付い、て!」

私は手を伸ばして、震える指でウィルの瞳に触れた。



綺麗な赤。

奥深く吸い込まれそうな程、底が見えない赤。

でも、ウィルに似合うのは、青だ。

晴れた空のような、輝く青。


薄れゆく意識の中で、私は彼の名前を呼んだ。



「ウィル。」


すると、ウィルの手の力が緩む。

頭に溜まっていた血が巡り、肺に空気が入る。



「ゴホッ、ゴホッ、ウィル...。」

ウィルの手が私の首から離れ、支えを失った私の体は地面に落ちる。

ウィルを見上げると、ウィルの右目だけが、青に戻っていた。



「リル、逃げて...。早く!」

私を害そうと伸ばされる左腕を、ウィルの右手が必死で押さえていた。

ウィルは歯を食いしばり、何とか自我を保っている。

そしてウィルは、足のホルターから一本のナイフを取り出した。









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