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「公爵家にあった記録は、アーレント王国建国よりも遥かに前の物もあった。なぜ公爵家が保有しているのかは、結局分からなかったけど。記録の中で、聖女や聖人には必ず、命をかけた試練が訪れていた。その試練では、多くの聖人、聖女が、命を落としている。」
「そんな...、そんな話は、聞い、て、ないわ。」
「教会が知らないのか、隠しているのかは分からない。でも、アーレント王国初代国王の父である聖人も、王国建国を託してすぐに、試練で亡くなっているんだ。」
そんな事、シロからは何も聞いていない。
レーグ様だって、他の司祭達だって、そうだ。
そもそも聖王国のどこにも、そんな記録はない。
どういうこと?
試練って何?
「禁書庫の記録を読み進めれば進める程、私の中で、リルが聖女であるという確信が強くなっていった。だから私は、卑怯な手を使う事にした。聖女をリル以外の人間に担ってもらおうと思ったんだ。丁度、ダリア様がいたからね。」
「私の代わり...?」
ウィルが語る一言一言が、私の胸に小さな棘を刺していく。
「アーレント王にダリア様が聖女になれる可能性を示唆したのは、私なんだ。陰ながら協力したのもね。私は絶対に、リルを聖女にはしたくなかった。結果、君を傷付けても。全て上手く進んでいた。最後に君に覆されるまでは。」
「ウィル...。どうして。どうして相談してくれなかったの?少しでも話してくれたら私は...。」
リルメリアがあんなに苦しむ事はなかったのに。
「リルは目の前に困っている人がいたら無視出来ないでしょう?世界に危機が訪れたら、リルは絶対に聖女になるよ。そして全力で人々を救う。だから私には、この方法しかなかった。」
「でも、だからってダリア様を犠牲にするなんて!」
「そんなの分かってる!誰であろうと犠牲にしていい訳じゃない。でも私は、リルを守るためなら、何度だって同じ事をする。」
「ウィル、私...、受け入れられない。そんなの無理。」
頭も胸も痛い。
何が真実なのか分からない。
「うん。ごめん。ごめんね、リル。本当にごめん。全て私のエゴだ。でも、リルが死ぬなんて考えられなかった。」
ウィルが、きつく私を抱きしめる。
私はその体温に縋り付いた。




