表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/308

7-20

周りを覆う光が消え始め、体に重力が戻ってくる。視界が鮮明になるのと同時に、私の足が地面に付いた。

するとすぐに、騒めく声が耳に届く。

視線を上げた先には、久しぶりに見たアーレント王国の重鎮が揃っていた。




「リルメリア嬢、この度の来訪、心より感謝致します。そして、アーレント王国の不始末に巻き込んで、すまない。本当に申し訳ない。」

列の先頭に並んでいたアルバス様が、両膝を突いて深々と頭を下げる。地面に突いた彼の膝が、土で汚れてしまっていた。

アルバス様に続いて、アーレント王国の重鎮達も膝を突いていく。


でも、納得していない人も多いみたいね。

貴族のくせに感情を隠しきれないなんて。



「謝罪は結構です。アーレント王国からは、如何なる謝罪も受け取りません。でも...。」


私はアルバス様の前に屈む。



「友達の頼みなら頑張ります。報酬は奮発して下さいね。」

アルバス様の見開かれた深い海の瞳と目が合う。私はにっこり笑って彼の手を取った。



「そうだね。貴女はそういう人だ。ありがとう。」

アルバス様が、私の肩までになった髪先に触れた。



「髪を切ってしまったのかい?あんなに綺麗な髪だったのに。」


「ふふ、これ、アルト商会の新製品です!髪の色や長さが、自由に変えられるのですよ。アルバス様もぜひ!おすすめです!」

私は軽くなった髪を掻き上げて、耳に付けたイヤリングを見せた。



「ククッ、そうか。それは、お忍びに丁度良いな。隠れて、貴女に会いに行ける。」


耳元で囁かれたアルバス様の甘い一言が、一瞬、私の体の自由を奪った。









「こっちだよぉー!」

シロは鼻をヒクヒクさせて、アーレント王国の王宮内を進む。

私達はその後ろを、言われるままに着いて行った。


揺れる真っ白な尻尾が可愛い!

チラチラと私との距離を確認するシロを見ていると、顔がニヤケそうになった。


しばらく私達は、シロの後をゆっくりとついて歩いた。

そして辿り着いたのは、王族専用のプライベートエリアだった。



「神獣は、何を追っているんだい?」


「シロは、ここに流れる神の力を探っているようです。この先にきっと、入り口があるのでしょう。」


「そうか。」

何かを考え込むように、アルバス様は黙ってしまった。




普段であれば、決して入ることが出来ない王族専用の空間へ、シロは構わず進んで行く。

そして、いくつかの部屋を通り過ぎると、薄暗い部屋に入った。


その広く長い部屋の壁には、歴代の王族の肖像画が掛けられている。入り口付近にはアルバス様の肖像画もあった。




「はいはい!あったよぉー!ココだよぉー!」


数々の肖像画に目を取られていた隙に、シロは随分と先に行ってしまっていたらしい。

私は早足に、シロの下へ向かった。



シロは部屋の終わり、大きな肖像画の前にいた。


私はその肖像画に目を奪われる。

ブロンドの髪と快晴の空の瞳を持つ男性が、胸を張ってこちらを見下ろしていた。

20代半ば頃の絵だろうか。

その目を引く美しい姿に、ウィルの面影が重なった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ