表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/308

7-11

最近の教会内は、どこか落ち着きがないように思う。吉報も凶報も私には届いていないし、直近で開催される行事もないのに。


何かが起こったのか、それとも何かの前触れなのか。

漠然とした不安が、私の中に渦巻いていた。






「ねえ、最近何か変わった報告は来ていない?」

薬の在庫を確認しに来た私は、調薬室で仕事をしているデルとアリアに声を掛けた。



「そうですねえ。ちょっと変な症例の噂はありましたよ?ですよね、ディレイルさん?」


「ああ、なんでも、急激な魔力枯渇に陥る人が複数確認されたらしい。」


アリアとデルが薬作りの手を止め、伏せていた顔をこちらに向けた。



「そんな報告、魔法士ギルドからは来ていないわ。」


「いや、魔力枯渇を起こしたのは、魔法士じゃなくて、比較的魔力の低い市民らしいんだ。まあ、噂程度にしか上がって来てはいないんだがな。丁度、俺達も調べてみるか相談してたところなんだ。」



噂程度なら、偶然の可能性もある。でも何だろう。釈然としない。



「レーグ様とノルンがずっと不在なのよ。お父様に相談してみようかしら。」




コンコン


「メリアお嬢様、アイゼン司祭がお見えですが、いかが致しますか?」


「ありがとう、お通しして。」


ライがドアを開けると、アイゼン司祭とその側付きの神官が入ってきた。



「こちらでしたか、聖女様。」


「アイゼン司祭、どうかしましたか?」

私の前では、いつもニコニコしているアイゼン司祭が、思い詰めた表情で立っていた。



「正直、聖女様にお話しするのは尚早かと迷っておりましたが、あまり猶予がない気がしましてな。老耄の勘は、意外と当たるのでございますよ。」


「それは、最近、頻繁に出入りしている司祭達のこと?」

この頃やけに、中央教会の政務部では、見覚えのない司祭や上級神官を目にしていた。



「気付いておられましたか。実は彼らは、赴任先の報告に来ているのでございます。まずはこちらを。」

アイゼン司祭の後ろに控えていた神官が、木箱から沢山の手紙を取り出した。


私はその一枚を手に取ると、裏返して封蝋を確認する。そこには懐かしい家紋が押されていた。そしてそれは、他の手紙も同じだった。



「アーレント王国の貴族やその周辺国からのものですね。」


「はい。」

神妙な面持ちで、アイゼン司祭が語り始める。



「三ヶ月程前になります。アーレントの小さな地方教会から伝手を頼って奇妙な手紙が届いたと、ニセンの教会に赴任している司祭から連絡があったのです。」

その手紙をアイゼン司祭は、私に見せてくれた。



「小さな村で一人また一人と、村人が魔力枯渇で倒れていったそうです。初めは、伝染病を疑ったと。しかし、数日経つと何事もなく、皆が回復していったそうなのです。」


私は、先程聞いたアリアとデルの話を思い出した。近くにいた二人も同様に、息を呑んでいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ