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6-6

それから数日経つと、一人また一人と体調不良を訴える子が出てきた。

けれど、グレゴール男爵はその子達に休みを与える事はしなかった。王妃の命令だからと。




「カイン、大丈夫?」

一緒に作業していたカインの様子が、何かおかしい。私は、体を震わせ今にも倒れそうなカインの肩を支える。



「お前、ここから出た方がいい。やっぱりこの花は変だ。」


「カイン、君には何が見えているの?」

不思議な輝きを持つカインの瞳を覗き込むと、その瞳は困惑に揺れていた。






「皆さん、ご機嫌よう。私の大切なお花のお世話、ご苦労様。貴方達のおかげで美しい花園が広がって嬉しいわ。」

突然のオーレリー王妃の登場に、子供達が歓喜に沸く。



「王妃様!私達、王妃様のために、一生懸命頑張りました!」


「ふふ、ありがとう。貴方達をここへ呼んで良かったわ。これからもよろしくね、可愛い子供達!」



「「「はい!」」」

麗しい笑顔を見せる王妃の横で、子供達が嬉しそうに笑っている。

でも私には、その優しい光景がどうにも受け入れ難かった。




「あ、あの、王妃様!」

心配そうにこちらを覗っているカインを余所に、私は王妃の前に躍り出た。



「王妃様!どうか、少しだけでも休みをください。慣れない環境に体調を崩す子が増えています。ですからどうか...。」


「やめなさいよ!」

私の前に、顔色の悪いエリンが立ち塞がる。



「王妃様、申し訳ありません。二度とこの孤児を、王妃様には近付けさせませんから!」

エリンが私の腕を強く掴んで引っ張っていく。



「エリン!待って!僕、まだ王妃様に言いたい事があるの!」


「いい加減にしなさいよ!」

エリンの振り上げた手が、私の頬を打った。



痛っ...。

叩かれた衝撃で、私の目に涙が滲む。



「孤児なんて王妃様の近くにいちゃいけないの!今すぐ、どっかに消えて!あっ...」

再び右手を振り上げたエリンの体が、大きく傾く。



「エリン!」

倒れかけたエリンを、私は何とか受け止めた。

真っ青な顔をしたエリンの体は、氷のように冷たい。私は、意識を失ったエリンをゆっくりと地面に降ろした。



「男爵様、エリンが!医務室へ運ぶのを手伝って下さい!」

私の周りに、エリンを心配した子供達が集まってくる。




「まあ、ふふ、エリンはそのままでいいわ。その子は私のとっても可愛い花になるの。ふふ、素敵でしょう?」


「え?王妃様?何を言って...。」

倒れたエリンを見て嬉しそうに笑う王妃に、子供達が困惑した顔を向ける。



「グレゴール、その子を花の中に寝かせてあげて。きっと良い花が咲くわ。」


王妃の指示を受けた男爵が、動揺する子供達を横目に、エリンへ手を伸ばす。


私は、男爵のその手を力を入れて叩き落とした。








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