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5-12

それからは毎日大変だった。


まずは司祭達との顔合わせ。

ティリウス聖王国の聖職者達は家名がない分、家門を覚える必要がないのは助かった。

でも上位聖職者の数がとにかく多い。なるべく早く人の名前は覚えないと。



そして作法の授業。

聖王国は宗教国家のため、アーレント王国とは作法が違う。

これは少しずつ体に染み込ませるしかない。


これからは毎日が勉強だ。







「聖女様、こちらはいかがでしょう?」



聖王国の政務部門が集まる中央教会の西棟、その中にある私専用の執務室で、アイゼン司祭が大量の布とデザイン画を広げている。

布の説明から始まった聖女のお披露目会用のドレス選びは、もうかれこれ数時間が経っていた。

私はあまりドレスや宝飾品には詳しくない。正直、派手でなければどれでもいいかな。



「リルメリア様、こちらの伝統的な衣装はどうでしょう?良くお似合いになると思いますよ。」

落ち着いた雰囲気のノルンは、いつもとは別人だ。

厳格なアイゼン司祭に育てられたノルンは、今でも彼に頭が上がらないらしい。そのため普段はなるべく猫を被っているそうだ。




「そうね。それにしようかしら。」


「では、そちらでご用意致します。して、聖女様、招待国はお決まりになりましたか?」




聖女のお披露目のための晩餐会。そしてその後に続く、お茶会や夜会。

私はそれに招く客を選ばなければならなかった。


レーグ様が全ての国の教会に聖女誕生の通達を出してから、沢山の祝言と贈り物が私の元に届けられた。ぜひ私と会いたいという文言と共に。

それを思い出すと、気分が重い。




「やりたくないなら、やらなくてもいいんじゃない?」

シロが前足で私の膝を突つく。



「なりません、神獣様!これは全ての者に神の奇跡を示すための儀式なのです。」


やる気に満ちたアイゼン司祭に、ノルンとシロが諦めた目を向けていた。



「アイゼン司祭、最初の晩餐会は招待客を限定して行います。その後の会は、少しずつ増やす方向で調整してください。」




アーレント王国を出る前に参加した夜会での辛い経験は、今でも思い出したくはない。貴族と来賓の私を蔑むような目は、前に進もうとする私の足を竦ませる。


でも私はそんな人達に、本当の聖女が誰であったのかを見せつける。

あの人達には、しっかりと後悔してもらうために。






「大丈夫ですよ、リルメリア様。ほら、来ました!」

私の仄暗い感情に気付いたノルンが、持ち前の明るさで、私をドアの方へ促す。

すると直ぐに、入室の許可を求める声が聞こえた。





「「お嬢様!」」

ドアが開くのと同時に駆け寄ってきたラナとネル。

温かな2人の腕の中で、私は喜びと安堵に包まれた。




「メリアお嬢様、お会いしたかったです。」

聞こえた声に顔を上げると、見慣れた制服が見えた。






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