表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/308

4-9

「どういうつもりだ、グレイス!聖王国の使者が来ているのなら、なぜ余に知らせない!」

側近の貴族を引き連れた陛下が、肩を怒らせて、こちらに近付いてきた。

その後ろには、王太子殿下とダリア様までいる。



「まあ、陛下!今はわたくしのお茶会ですのよ?レディアス、なぜ陛下をお止めしないの?ダリアまで連れてくるなんて。」

王妃様が扇で口元を隠しながら、蔑むように陛下を見ていた。



「何がお茶会だ!余と使者の会談が先だろう!それでもこの国の王妃か!」


「そうですよ、母上。今はダリアを認めてもらう事の方が重要です。」


陛下と王妃様の言い争いを、ダリア様はオロオロしながら見ていた。

私はその様子を、猊下の影から観察する。



「使者よ!なぜ余の招待を無視した?聖王国の重鎮とはいえ、一国の王に対して不敬ではないか!ん?なぜ、そなたがここに...」

詰め寄ってきた陛下と、猊下の肩越しに目が合った。

陛下の顔に困惑の表情が浮かぶ。


すると猊下は私の肩に手を置き、スッと席から立ち上がる。

長身の猊下が、目の前の陛下を見下ろしていた。



「そういえば、正式に名乗っていなかったな。」

ふっと風が止み、穏やかな日の光が猊下を照らす。

神が舞い降りたかのような光景に、誰もが口を閉じた。



「ティリウス聖王国第461代目司祭長レーゲンビリアだ。」


「「な!?」」「え?」


「私がここへ来たのは神の意思によるものだ。」


「や、やっぱり...」

ダリア様がキラキラした目で猊下のことを見ていた。




「ちょっと、ちょっと、リルメリア様!」

私の後ろに控えていたノルンが、声を顰めて話しかけてきた。



「騙されないで下さいね。猊下がここに来たのは、その日にあった会議が、嫌だったからなんです。ププッ。逃げてきたんですよ、あの方。しかも、さっきの光。あれ、魔法による演出なんで。よくやるんですよね、偉い人が来たミサで。今度その時の猊下の絵あげますね。これがまた笑えるんですよ。」


あ、うん。

ノルン、初めて会った時は真面目な方だと思ったんだけどな。

ちょっと笑い上戸というか。笑いのツボが独特というか。

でも優秀な方なのよね。そのギャップが凄い。



声を顰めて話していたのに、猊下にギロリと睨まれた。私達はすぐに背筋を伸ばす。



「リルメリア、こちらへ。」

猊下は先程の鋭い視線から一転、優しさを湛えた瞳を向けて私を呼ぶ。



「な、なんで!?どうして?」

猊下の横に微笑みながら並ぶ私へ、ダリア様が大声で叫んだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ