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3-87

ダリア様が驚愕の表情で、私の手元を見つめている。

その視線を追って顔を下に向けると、無意識に握りしめていた私の手の中に違和感を感じた。



どうして?


胸元で握っていた両手を開くと、仄かな輝きを放つ花細工の瓶があった。





「リルメリア嬢、大丈夫ですか?」


「ゲイツ様?」

壇上の柱の影から、ゲイツ様が手を伸ばしている。



「さあ、こちらへ。アルト夫妻は先に馬車へお連れしました。今なら近衛はいません。お早く。」



「リルメリア嬢、こんな事に君を巻き込んですまない。さあ、行ってくれ。ゲイツ、頼んだ。」

一瞬泣きそうな顔をしたアルバス様が、私の背中を押した。

私は戸惑いながらもゲイツ様に手を伸ばす。


すると、か細い声が私を呼び止めた。



「リルメリア様、酷いです。こんな事をするなんて。お願いですからもうやめて...」


フラフラと近づいてきたダリア様が、私の腕を掴んだ。



「ダリア、やめるんだ。リルメリア嬢のせいじゃない。分かっているだろう?」


諭そうとするアルバス様の手を振り払って、ダリア様は更に私に詰め寄った。



「ウィルフレイ様のことがまだ好きなんですか?だから私に意地悪するんですか?」

ダリア様が力を込めて私の肩を揺さぶる。

私は興奮状態のダリア様から離れようと後ろへ下がった。




「ごめんなさい。ウィルフレイ様は私のことが好きなんです。だってずっと一緒にいてくれるんですよ?これからもずっと一緒なんです。」


ポロポロと泣きながら呟くダリア様の言葉が、私に纏わりつく。振り払おうと踠いても、ぴったりとくっ付いたダリア様の手は離れない。



「皆んな私が好きなんです。ごめんなさい、リルメリア様。ごめんなさい。」


ダリア様から逃れたい一心で、私は何度も体を捩る。

ダリア様の手が離れると、反動で自分の体が大きく傾いた。


その瞬間、ダリア様の悲しそうな、でもとっても嬉しそうな顔が見えた。




体が宙に浮き、足元が無くなる。


壇上にいた私は、背後の階段に気付いていなかった。

ダリア様と縺れ合うように、壇上から宙に投げ出される。

景色がゆっくり流れる中、ウィルの姿だけがしっかりと見えた。


私はウィルに向かって手を伸ばす。

私の頭は、魔法なんて考えていなかった。

ただ、反射的に、当たり前のように体がウィルに向かって助けを求めた。




ウィルが私ではなく、ダリア様に手を伸ばしていても。




体に鋭い痛みが走る。でもどこが痛いのか、私にはもう分からなかった。

視界がやたらとボヤけ、瞬きをすると、涙が目尻から流れ落ちた。

私は泣いていたらしい。


私の瞼がゆっくりと下がっていく。



闇へと落ちる意識の中で、誰かが私を呼ぶ声が聞こえた。




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