表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/308

3-83

何台もの馬車が行列を作り、やっと辿り着いた王宮は、沢山の人で溢れていた。

人の輪ができている場所には、異国の衣装を纏う人達もいる。

その中を給仕が、いつもとは違う豪華な制服で人の間を行き交っていた。

警備の騎士も正装姿で会場内を見渡している。




私達が会場内に入ると、一瞬賑やかなお喋りが止み、窺うような視線を向けられた。

その中をお父様とお母様が、堂々と進む。



私達に話しかけに来る貴族はいない。遠くにフェリナとアデリアの姿が見えたけれど、顔を逸らされてしまった。

仕方がないとはいえ、友達に無視されるのは悲しい。



「なぜ、アルト侯爵が?」


「レブロン公爵もいないというのに、よく顔を出せたものだ。」


「侯爵としての最後の公務だからじゃないか?男爵に格下げされるようだし。」


「まあ、それは本当だったの?恥ずかしい。」

 

アルト家を馬鹿にしている人達に、お父様が睨みを利かせると、ビクリと震えて黙り込んでしまった。



「リルメリア嬢!良かった。貴女に会えて。」

貴族の中を掻き分けて、ゲイツ様が駆け寄ってきた。そして、人目も気にせず膝を突く。


周りにいた人達が驚きのあまり声を上げた。



「申し訳ありません。私は貴女の辛い現状を知らなかった。大切な貴女が苦しんでいる時に駆け付けられない私は騎士失格だ。」

ゲイツ様が私の手を握り、自身の額に当てる。



「あのっ!ゲイツ様、頭を上げてください!ゲイツ様は民を守っていたのでしょう?アルバス様と大変な思いをされたと聞きました。それなのに、私の事を心配していただいて、ありがとうございます。」


「心配するのは当たり前です。私は貴女を守りたい。せめて今だけでも貴女の盾でいさせてください。」


そう言うとゲイツ様は、私の隣に立って、不躾な視線を遮ってくれた。




人の視線がこちらに向いている中、会場内にファンファーレが響き渡る。


ゲイツ様に背中を支えられ壇上を見ると、陛下にエスコートされたダリア様がゆっくりと階段を登っていた。その後ろに王太子殿下とアルバス様が続く。

しかし王妃様の姿はどこにもなかった。


私は内心首を傾げながら壇上を見つめる。



「今宵は素晴らしい日だ。歴史的な日になる!ダリアよ。」


「は、はい、お父様。」


一歩前に出たダリア様は、今まで身に付けていた聖女のような清楚なドレスではなく、真紅の豪奢なドレスを着ていた。その頭には、王妃様が式典で着用されてきた国宝のティアラが乗っている。

相変わらず不安そうに背を丸めながら、その手に王家の秘宝たる錫杖を握っていた。



「では、その輝かしい瞬間を皆で迎えよう。」


陛下の掛け声で、会場のドアが大きく開いた。





感想、誤字報告ありがとうございました。励みになります。たくさんの「いいね」も嬉しいです。

評価、ブックマークしてくださった方にも感謝しかありません。本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ