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3-80

「ウィルフレイ様、ごめんなさい。私、またリルメリア様を怒らせてしまいました。」

ダリア様は涙を流しながら、縋るようにウィルを見つめる。



「まあ、ウィルフレイ様ったら遅いですわよ。騎士は聖女様を守らなければいけませんわ。陛下に叱られてしまうわよ?」

ベイルリーン様がダリア様を慰めながら、ウィルに妖艶な笑みを向けた。




「さあ、ダリア。騎士も来たことだし、僕とお茶でもしよう。」


「で、でもリルメリア様がっ!」


「じゃあ仲直りに、彼女も僕達のお茶会に呼ぶかい?」

ダンディーラー様が、急に私に顔を向ける。その瞳には、私を蔑むような冷たい感情が宿っていた。



「い、いや!怖い!それは、いやです!」

ダリア様は首を振りながら、ダンディーラー様の胸に顔を埋めた。



「だってさ。残念だったね、リルメリア。君、聖女様に嫌われちゃったみたいだよ?」


「そうみたいですね、残念です。」

ダンディーラー様が私を馬鹿にする様な視線を送ってくるけれど、どうでもいい。




「リルメリア様、この事は陛下に伝えますわよ?よろしくて?」


「はい、構いません。では、私は失礼致します。」

私は頭を深く下げた後、私の前に立ち塞がるリノアーノ様の横を通り過ぎた。




「強気な貴女は、いつまで続くかしらね。その綺麗な顔が絶望に歪むところを早く見たいわ。フフ、次に会うのを楽しみにしているわね。」

ベイルリーン様が嬉しそうに、うっとりと言葉を投げかけた。

私は再び頭を下げ、ベイルリーン様に背を向ける。

この方達とはこれ以上話したところで、理解し合えるとは思えない。




私は最後の用事のために、ドア近くに佇むウィルへと足を向けた。



「リングドン様、こちらをお返しします。元婚約者の私が、いつまでも貴方の戻り石を持っているのは良くないでしょう?」

私は胸元のペンダントを外し、ウィルに差し出す。

けれどウィルは、無表情で私の手を見つめるだけで、受け取ってはくれない。


私に触れるのも嫌なの?



「フフ、元婚約者に無視されるなんて。」


「ダリア様に不敬を働くからよ。自業自得ね。」


態々聞こえるように呟かれる声が不快だった。

最後まで私に向き合おうとしないウィルにも。



「そう。ならもう、これはいらないわね。」



私は手の周りに二重の強力な結界を張る。そして一気に高魔力を練り上げ、経過魔法を掛けた。


経過魔法は、対象物の時間の流れを急速に早める魔法だ。強力な攻撃魔法にもなりうる危険な魔法のため、人前で見せるのはこれが初めてだった。


私の手の中で長い年月を経たペンダントが、徐々に形を崩していく。やがて跡形もなく消えていった。






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