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3-72

呼び出された学院長室には、新任の学院長と担任のアイメル先生の他、王宮の上級文官が席にも座らずに私を待っていた。

その表情は暗く重い。



「アルト嬢、貴女には失望しました。」

敵意を剥き出しに、文官が話し出した。



「自己紹介もなしに、いきなり何でしょうか?」


「アルト嬢!」

私の不遜な態度に、学院長が怒りを見せた。

でも私は態度を変える気はない。初めに礼を欠いたのはそちらだ。



「さすがは、聖女気取りと言われている方だ。年長者を敬うことも出来ないとは。」



はあ、ここでもなのね。本当にうんざりする。



「それで、何の要件でしょうか?」


「アルト嬢、貴女が提出した課題に陛下が酷くお怒りだ。あれは初代国王への冒涜ですぞ!」



「なぜでしょう?あの花は聖火と共に、この国の守りになります。」


「こんなものが?はっ、笑わせる。我が国は聖火で守られている。他は不要なのですよ。それとも貴女は王族に取って代わるおつもりか?」


「そんな事考えていません!」

私は声を荒げて反論する。

でもここにいる人達は、私を敵のように睨みつけていた。



「いいですか。今、王女殿下は聖女に認定される大事な時なのです。こんなもので、殿下を煩わせないでください。」


「申し訳ありません。学院は王女殿下を全面的に支援致します。2度とこのような事は起こしません。」

学院長は文官に頭を下げると、私が提出したプランターを床に叩きつけた。



「アルト侯爵家には、陛下より直々に処分が下されるでしょう。アルト嬢、貴女は聖女ではないのですよ。王女殿下に成り代わろうなど、なんと愚かな。しっかり反省しなさい。聞いていますか?」

文官は苛立ちを隠さずに、私を大声で叱責した。


私はそんな文官を無視して壊されたプランターに近付く。しゃがみ込んで土を払うと青い花が見えた。


土で汚れたこの青は、私の壊れかけた恋のよう。そう思うと悲しいはずなのに、笑いが込み上げてきた。



「フフ。」


「アルト嬢、貴女という人は!」


「アハハ。」

一度笑いが飛び出すと止まらない。私はしゃがみ込んだまま笑い続けた。



「アルト嬢、態度を改めないなら、こちらとしても厳しい罰を下すことになりますよ。」

学院長が私の肩に向かって、手を伸ばしてきた。


パシン


私はその手を強く払って立ち上がる。



「構いませんよ。お好きにどうぞ。」

なんとか笑いを収め、私は堂々と笑顔で告げる。




「では、さようなら!」

私は学院長の慌てた顔を見ながら、転移魔法を展開した。






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