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「お嬢様、素敵です!」
「本当?可愛い?」
「はい!世界一の美女です!」
ラナとネルが自信満々に私を褒めてくれた。美女は身内贔屓だと思うけどな。でも2人の気持ちが嬉しい。
私は姿見の前で自分をチェックする。
以前ウィルがプレゼントしてくれたドレスを選んだ。ウィルの瞳の色のドレス。
これをプレゼントされた時の気持ちが蘇る。私の衣装室は随分と青が増えた。これは私にとって幸せの色。
「未練がましいかしら。」
誰に問うた訳ではなく、ポツリと私の口から溢れ出た。
「いいえ、そのお色はお嬢様が一番お似合いです。」
ラナとネルが真剣な顔で答えてくれた。
「ありがとう。そうね、2人が綺麗にしてくれたんだもの。今日の私は1番よね。私を見せびらかして来るわね!」
「「はい!」」
「あっ、テイラー卿!」
ノックの後に、テイラー卿が正装姿で現れた。今日も麗しい姿。
ラナがうっとりした目で見ている。
「ふふ、いけませんよ、お嬢様。ローズとお呼びくださいね。今日のエスコート役は私です。よろしくお願いしますね。」
「ふふ、そうね。では、ローズよろしくね。」
私はローズが差し出した手に、自分の手をのせた。
ドアを開けようとしたラナが、はあっと胸を押さえていた。
侍女の案内で私達は、王宮の廊下を歩く。今日のお茶会は、王妃様の薔薇園で行われるそうだ。
私は侍女に手渡された、本日のドレスコードの薔薇を髪に挿した。
いくつもの花のアーチを潜ると、そこには背の低い薔薇が満開に咲き誇っていた。
薔薇の合間には、動物の銅像が見え隠れしている。可愛いものが好きな王妃様らしい薔薇園だった。
お茶会の会場に近づくと、既に沢山の招待客が席に着いて、話に花を咲かせていた。
今回のお茶会は、私と同年代の令嬢ばかりだった。ダリア様のお茶会だからだろうか。
ゆっくり歩いていると、至る所から視線を感じる。あまりいい気分ではないけれど、私は堂々と前を向いた。
会場の奥に王妃様を見つけ、私はまず挨拶に行くことにした。
「ご機嫌いかがでしょうか、王妃様。リルメリア・アルトがご挨拶に伺いました。」
「あら、いらっしゃい。今日の貴女も素敵ね。薔薇に囲まれていると妖精みたいだわ。会場中の視線が集まっているわね。」
楽しそうに笑う王妃様の褒め言葉に、私は少し戸惑いながらお礼を返す。
「リルメリア嬢は、ここにいらっしゃいな。」
私は王妃様が指し示した隣の席に腰を下ろした。
出来れば目立たない席に座りたかったけれど、仕方がない。
周りからの視線がチリチリと私に焼きついた。




