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「だからギルドだよー。魔法士専門のね!リルちゃんから君達が優秀なのは聞いてたんだ。実際、実習訓練も見たしね。だから学院辞めて僕と遊ぼ、じゃなくて働こう!」
先生、今一瞬本音が...
私はルーイ先生を呆れた目で見つめる。
「ヤダな、リルちゃん。僕は大真面目だよ。優秀な子を平民だからって埋もれさせる気はないの。」
「しかしルイセント様、魔法士ギルドとは?」
「魔法士って意外と曖昧な職業でしょ?だから魔法士をちゃんとランク分けして、得意な分野で活躍出来る場を提供しようと思って。」
私達が目指している魔法士は、資格職ではない。一般的には魔法科を卒業したり、魔法士に弟子入りして認められることで魔法士を名乗る。それこそ魔法が使えれば、独学でも可能なのだ。
だからどうしても実力差が大きい。そしてそれは素人目には分からないため、仕事を依頼する上でトラブルも多いと聞く。
「ルイセント殿、確かに素晴らしい考えだが、宮廷魔法士の貴方にそんな余裕が?私とアルト侯爵の考えでは、彼らに留学先を用意しようと思っていたのだが。」
公爵の言葉に、お父様も深く頷いている。
「ああ、大丈夫!さっき辞めてきたから。」
「は?」
え?何を?
「だから今日、宮廷魔法士を辞めてきたの。なんか今の王家微妙だし。間違いなく近々破綻するよ、アレ。」
今、色々凄い話を聞いた気がするけれど、私の頭が理解してくれない。
「は?辞めた?辞めたとは?」
いつも表情一つ変えない冷静沈着な公爵も額に汗をかきながら慌てている。
「グフっ。本当に辞めたんだ。面白すぎる。」
お父様、心の声が凄い漏れ出てます。
お父様はお腹を抱え、ソファに倒れるようにして笑っていた。
「僕の予想だと、10年。いや、そんなに保たないかも。まあ、それぐらいの内にこの国は荒れるよ。だから、守りたいものを守れるように。僕はその力がある子達の道標になってあげるつもりだ。」
ルーイ先生の優しい瞳の中に固い決意が見えた。
「先生、荒れるとはどういう事ですか?」
「リルちゃんも見て来たでしょ?弱まった聖火を。あれはもう限界が近い。」
聖火が徐々に弱まっていると確かに教会で聞いた。近頃は各地で魔物の被害も増えているとも。
でもダリア様の生み出した聖火はとても力強かった。あれならきっとこの国を守ってくれるはず。
「リルちゃん、もし、王女様が今いなくなっちゃったら?または、何かの拍子に聖火を生み出せなくなったら?」
それは。
でも、そんなこと。
「それにね、残念だけど、聖火の効力が弱まっているのは確定なんだ。王女様の聖火も例外ではないと僕は思うよ。」
私は最悪の結末を想像して、体の震えを抑えることが出来なかった。
 




