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「国王陛下がアルグリア学院とレベルス学園の合併を指示したんだ。事実上、アルグリア学院はなくなる。」
学院がなくなる!?
「今、議会でも学院存続の可否が問われている。しかし、学院は元々、女王によって始められた王家の事業の一つだ。つまり、王家の一存で廃校にすることも可能なのだ。」
「でもお父様、アルグリア学院は他国の生徒も受け入れていますわ。それこそ、王族出身の卒業生だっておりますのに。そんな勝手な事をして王家の威信に傷が付きませんの?」
「そ、正にそれだ。我が国のおバカな貴族からしたら目障りなのがアルグリアなんだよ。何しろ、貴族専用のレベルスより目立っちゃってるし。最近はどこの王族もアルグリアに入りたがってたでしょー。」
確かに、アルグリア学院の身分に囚われない実力主義は珍しく、その専門的教育水準の高さから他国の多様な分野からも注目されてきた。そのため、重要な役職に就いている学院出身者も多い。
「だからねー。あのダリア王女様を利用して、アルグリアをレベルスに吸収合併させる計画なんだよー。近々ね。」
ルーイ先生は軽く言っているけれど、そんな事になれば、平民の生徒は今まで通りではいられないはず。
「お父様、それはもう決定なんですか?」
「時間を稼ごうとしたんだけどね。議会でもほぼ可決なんだ。レブロン公爵も頑張ってくれたんだけどね。」
「ああ、完全に根回しが遅れた私の失策だ。まさか、ここでシルヴァンフォードが出てくるとは。」
公爵が悔しそうに眉間に皺を寄せている。
アルト家はシルヴァンフォード公爵家と全く交流を持っていないため、詳しい情報は分からない。確か、現当主は高齢で社交界には顔を出していないと聞いた。そして、その領地は最近魔物の被害が多発しているとも。
今、ウィル達も聖火を灯すために向かっているはずだ。
ウィルの事を考えるとチクリと胸が痛んだ。
「陛下はダリア王女殿下の周りを貴族で埋めたいみたいなんだ。それも王家を支持している家でね。だから魔法科の平民の君達はきっと厳しい状況に置かれる。」
さすがに私達にも、その状況は予想できた。今でさえ息苦しいのに。
「だからねー。君達に選択肢をあげようと思ってるんだ!」
重い空気が流れる私達に、ルーイ先生が持ち前の明るさを発揮する。
「君達!僕のギルドに入らない?」
「「「へ?」」」
いつも以上に理解し難いルーイ先生の発言は、私達に最大級の混乱を齎した。




