表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/308

3-56

ウィル、今どこにいるの?

教室の窓から入り込んできた風が私の頬をくすぐった。



「..ル、リル?」


「あっごめんね。ぼうっとしてたわ。どうかした?」


「うんん。リルもご飯食べに行こうって誘いにきたの。大丈夫?」

リズベルが上目遣いでこちらを伺っている。



「ありがとう、お腹すいちゃった!行きましょう!」

私は広げられたままの教科書を片付けて、リズベルと食堂へ向かった。




広い食堂は真新しい制服を着た生徒で席が埋まっていた。生徒数の少ない魔法科の食堂はいつも疎らなのに。



「おーい、こっちこっち!」

窓際の席を確保していたロイドが、こちらに向かって大きく手を振っている。



「ありがとう、ロイド!助かったよ!本当、人がいっぱいだね。」


「だよなー。こっちは必死に受験したのにさー。学院は実力主義じゃなかったのかよ。国王の命令か何か知らないけどさー。ここでもダリア王女様かよ。」


「ちょっとロイド!人前ではダメだよ!」

リズベルの指摘に、ロイドが慌てて口を塞ぐ。





ダリア様の活躍はあっという間に国中に広がった。

当初、ダリア様はシルヴァンフォード領で招火の儀を執り行い、王都へ戻る予定だった。けれど、ダリア様の要望で、各辺境領の教会にも聖火を灯して回っている。

魔物の脅威に晒されていた辺境の民に希望を齎したその姿は、聖女様のようだったと称賛されていた。そしてそんなダリア様に寄り添うウィルは聖騎士のようだと。


昨日、お父様が隠すように読んでいた新聞の内容を思い出して、溜息が出る。

ダリア様は出自にも負けず、頑張っているのに。私はダリア様に嫉妬している。

自分から湧き出る醜い感情を私は抑えることが出来ないでいた。




「もう!ロイドの言っていることは正しいわ。まったく、創立者たる女王陛下の理念はどこに行ってしまったのかしら。」

珍しく荒々しい様子でティーナが乱暴に席に着いた。



「どうした、レブロン?荒れてんじゃん。」


「ロイド、残念だけど、私達の学年にも転入生が来るわよ。魔法の才能があるなんて聞いた事もない子達だけれどね。」

ティーナが項垂れるように溜息を吐いた。



国王陛下はダリア様の才能が開花すると直ぐに、ダリア様の支援者を集め始めた。

そして、ダリア様が通うアルグリア学院にその支援者の子女の編入を許可した。

今、新しい制服を着て、魔法科にいる生徒達はダリア様の側近候補達だった。


もちろん学院側の反発も大きかった。けれど、抵抗していた教師陣は一掃され、学院長も更迭されてしまった。私達の担任のバリー先生ももう学院にはいない。



「私達のクラスの先生ってどうなるんだろ。」

ボソリと呟いたリズベルはどこか不安そうだ。


「バリー先生にはアルト商会に来てもらったの。優秀な方だし。」


「そっか。じゃあ会いにいけるね。良かった。」

寂しそうに笑ったリズベルに、私は言いようのない罪悪感を感じた。






「リル、少しいいかしら?」


ティーナの真剣な表情に私は少し嫌な予感がした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ