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3-49

「リークロン卿...」


「貴女にはジョーゼルと呼んでほしいのですがね。」


「これはどういう事だ、ジョーゼル!」


「アハハ、アハハハ!」

怒りを見せるアルバス様に対して、リークロン卿は狂ったように笑っている。



「ああ、本当に美しい...」

狂気に染まったリークロン卿の目に、私は体が動かなくなった。



「貴女もサンクティーの素晴らしさが理解できるでしょう?この花さえあれば、もう聖火は必要無いのですよ!魔物に怯える心配もね。」



「愚かな...」

無表情で佇むアルバス様が、リークロン卿に剣先を向けた。



「リークロン卿、貴方達は罪の無い子供達をその花の犠牲にしたわ。それが素晴らしいですって?そんな訳ないでしょう!」


「たかが孤児ではありませんか。領民の生活を守るために、その命を有効利用しただけです。」


有効利用ですって?

リークロン卿は孤児の命など何とも思っていないのだろう。私の怒りに首を傾げている。



「リルメリア嬢、残念だが、こいつに何を言っても無駄のようだ。子供を苦しませながら魔鉱石化するなんて、人のする事じゃない。」


アルバス様は、一瞬でリークロン卿に駆け寄ると、首目掛けて剣を振り下ろした。

空気が裂ける音と共に、金属音が響く。

アルバス様の剣をリークロン卿の剣が受け止めていた。

アルバス様は攻撃の手を緩めず、リークロン卿を攻め続ける。しかし、それをリークロン卿は難なく躱していた。


リークロン卿は近衛騎士、しかも魔物討伐にも出向いている程の実力者。まだ学生のアルバス様には部が悪い。しかもこの狭い空間では攻撃魔法は使いづらい。


私は上の階に助けを求めるため、階段へ風魔法を飛ばす。しかし、途中で何かに遮られたのが伝わってきた。



「アルト嬢、貴女の商会から買った結界を張っています。助けは来ません。」


初めから計画されていたのね。

私達の行動もバレていたのだろう。


転移魔法で直接助けを求めに行こうかと考えた時、リークロン卿の剣がアルバス様の脇腹を抉った。



「ぐっ」

その場に膝を付いたアルバス様にリークロン卿は剣を突きつける。



「やめて、リークロン卿!」


「アルト嬢、この地は何度も魔物に襲われているんですよ。聖火が弱まっても王家は助けてはくれなかった。いや、聖火ではもうダメなんだ。今この地を守っているのは、貴女の結界魔道具とサンクティーなのですよ。」

今まで飄々としていたリークロン卿に、どこか憂いを帯びた影が纏わり付く。



「聖火の限界はもうずっと前から王家は把握していたんだ!そうでしょう、アルバス殿下?」


その言葉に答えることなく、アルバス様はリークロン卿をじっと見ていた。



「無能な王家は必要ない...」

リークロン卿はボソリと呟くと、アルバス様の傷付いた脇腹を蹴り飛ばす。アルバス様の体は勢い良く倒れ、白い花弁を舞い上げた。アルバス様の周囲の花が、徐々に赤く染まっていく。



「きゃあ!アルバス様!」

私がアルバス様の下へ駆け出すよりも早く、リークロン卿が私の手を取った。

人の体温を全く感じないリークロン卿の手に、私の背筋が恐怖に震える。


リークロン卿の剣を放した手が、私の喉を掴んだ。






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