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「見て！アルバス様！あの船すごーく大きいのね！どこに行くのかしら。私も旅行に行きたいわー。ねー連れてって！いいでしょ？」
「君は仕方がない子だね。そうだな。君の名前の付いた船でも作ってしまおうか。ねえ、リルメリア？」
「本当？嬉しいわ！」
ああ、人の目がすごく気になる。恥ずかしい。でも今は我慢。
私達の立てた作戦はこうだった。とにかく手当たり次第動き回る。
その為に私は我儘な令嬢を演じることにした。
リークロン伯爵夫妻とは挨拶もそこそこに、私とアルバス様は護衛騎士を引き連れて視察という名のお買い物に来ている。
リークロン領の領都は、貿易港を合わせた大きな都市で、異国の商品を扱う店がひしめき合っていた。けれど、整然と作られた街並みは美しく、治安も良いのか女性だけで出歩く姿が見られる。
また、学校や研究機関などの学術的な施設においても、他国の文化を柔軟に取り入れ、著しい発展を見せていた。
「アルバス様、このまま港も見て回りますか？」
「そうだね、今日は少しだけ行ってみようか。」
私達は声を潜めて確認し合う。その横では、先程購入した大量のドレスを侍従達が馬車に積み込んでいた。捜査のためとはいえ、これは全て、アルバス様から私へのプレゼントだ。
押し込まれていく色とりどりのドレスに溜息が出た。
「リルメリア、行くよ。」
「はあーい、アルバス様！」
私は抱きつくようにアルバス様の腕を掴んだ。チラリと見えたライの視線が痛い。
「疲れた。」
私はアルバス様に買ってもらった煌びやかなドレスのまま、ソファに倒れ込んだ。
「沢山買ってもらったわね！この際じゃんじゃん買ってもらいなさいよ。あっ！これ素敵！」
ラナとネルが私の世話を甲斐甲斐しくしている横で、レイズがプレゼントの中身を物色し始めた。
「確かに、頂いた物はみんな素敵よ。アルバス様のセンスは素晴らしかったわ。でも...」
「ウィルフレイ様からじゃないものね。」
レイズは、ニヤリと笑ってこちらに振り返った。
「そ、そうなんだけど...。もう！レイズのバカ！」
私はソファに顔を埋めた。
「あらあら、可愛い。」
本当に意地悪！
私はしばらくの間、ソファで悶々としていた。
「アルバス様、なぜこのメンバーが集まっているのですか？」
今、リークロン邸に用意された私の部屋には、アルバス様、ゲイツ様、ルード卿、そしてアルト商会側のリヴァン先生、レイズ、ルイ君が揃って一つのテーブルを囲っている。
アルバス様の後ろには、見慣れない侍従が控えていた。
「ゲイツ、先程入ってきた情報があってね。アルト商会にも全面的に協力してもらうことにしたんだ。」
「そういう事だからよろしくねー。ゲイツお兄ちゃん！」
ここにいる全員がギョッとした顔でルイ君を見た。
「どこかで見た顔だとは思いましたが、貴方でしたか。」
ゲイツ様のルイ君を見る目は鋭い。でもルイ君は全く気にならないようだ。
「ほらほら、アルバス君続けて！」
アルバス様が、諦めたように大きな溜息を吐いた。
「ルイセント様、後で説明してもらいます。」
静かな部屋の空気が、ゲイツ様の低い声で震えた気がした。
