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「なぜ、貴方が?」
「リルちゃんは僕の愛弟子だからね。悪い男から助けに来たの。お前もいい大人なんだから、周りを見なさいね。」
「ルイセント様、余計なお世話です。」
友好的なルーイ先生に対して、ゲイツ様の態度は刺々しい。
「本当にお前は可愛くないねー。前はあんなに可愛かったのに。」
「うるさいですよ。それより、早く出て行ってください。」
「はいはい、でもリルちゃんは連れて行くよー。」
私を抱きしめるゲイツ様の腕に、僅かに力が入る。
「リルちゃん疲れてるんだから休ませてあげなきゃダメでしょー。ほら、早く!」
ゲイツ様は私に視線を落とした後、渋々腕を離してくれた。
「やー、さすがは僕の愛弟子!リルちゃんの結界魔法破るのに苦労したよー。久しぶりにこの杖使ったわー。」
ルーイ先生は身の丈ほどもある杖を、無造作に振り回している。
「心配のあまり、行き過ぎた行動をとってしまいました。どうか、お許しを。」
ゲイツ様はソファに座る私の前に跪いた。
「大丈夫です!私も勝手な行動をして申し訳ありませんでした。」
私もゲイツ様に頭を下げる。
「では、お相子ということにしましょうか。」
「はい。」
お互い和やかに笑い合うと、今までの重い空気が飛散した気がした。
「部屋まで送りますね。」
私はゲイツ様の手を借りてソファから立ち上がる。
「ちょっとー、僕が連れて行くのにー。」
ゲイツ様はルーイ先生を一瞥しただけで、すぐに私の方を向いた。
「ルイセント様は、魔法のセンスは素晴らしいですが、それだけです。私はあの方に教えを乞うことをお勧めしません。」
ゲイツ様は私の顔を覗き込んで優しく諭す。
「ひどい!本当に可愛くない!ローランドに言いつけてやるー。」
「勝手にどうぞ。」
ルーイ先生とゲイツ様は知り合いなのだろうか。ローランドって確かセイルース公爵の名前だったはず。
2人の遣り取りに首を傾げていると、ゲイツ様に手を引かれた。
「疲れているのにすみません。ここも外も煩いですから、さっさと移動しましょう。今度は誰にも邪魔されない所で、ゆっくり過ごしましょうね、リルメリア。」
「え?」
ゲイツ様は私の腰を引き寄せると、部屋のドアをゆっくりと開いた。




