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 シャイルが召喚棟へ向かったという話を聞いたレイディは彼のあとを追っていた。それはグルンナインたちがよからぬ動きを見せたからである。

「まったくもう!」

 彼女の横にジルトニスの姿はなかった。彼は補習の最中である。悪態をついたのは肝心なときに役立たずだからだ。

 悪い予感は残念ながら当たってしまった。召喚棟への入り口にいた二人の取り巻きがいたからだ。

「よう、姫さん。悪いが、ここを通すわけにはいかねえ」

「どきなさい」

 レイディは二人を睨みつける。

「姫さんよ、わかっているよな。召喚操士同士が睨み合うときは戦いの合図だってことよぅ!」

 小太りのほうが踊りながら召喚獣を繰り出すと、続けてもう一人のひょろ長も続く。

「……いいわ。相手してあげる」

 売られたバトルは買うのが礼儀だ。レイディも召喚獣を繰り出す。

「行きなさい、ウィル・オ・ウィスプ!」

 レイディの足元から青白い火の玉が現れる。

「へっ、火の玉になんぞ負けるかよ!」

「俺たちの召喚獣に敵うかな?」

 二人が繰り出したのは……。

「何、それ?」

「カナブン!」

 周辺を飛んでいる小さな虫が飛んでいる。結構、うるさい。

「ナマコ!」

 足元に転がっている赤いぶつぶつした突起の出ている軟体の生き物だ。微動だにしない。

「俺のカナブンは小さくて素早い。攻撃が当たるかな?」

「俺のナマコは心臓がない! つまり不死身!」

 レイディは大きくため息をつく。

「とりあえず、燃やし尽くしたらいいのね」

 レイディは少しドスを利かせると、ウィル・オ・ウィスプの火が強くなる。それを見た二人は「ひっ」という悲鳴をあげた。

「通すの? 通さないの?」

 二人は迷うことなく「どうぞ」とレイディに道を譲り、彼女の背中を見送る。

「ったくよぅ、こっちが手を出さないからっていい気になりやがって」

 グルンナインからレイディを傷つけてはいけないということを厳命されていた。二人の召喚獣の使い勝手が悪いということもあり、自分で戦闘をこなしたりするほうが得意だった。

「通してよかったのかよ?」

「仕方ねえだろうよ。あの女には手が出せねえんだから」

 そんなやりとりをしているとジルトニスがやってくる。それを見た二人はニヤニヤとした笑いを浮かべる。それはどうやっていたぶってやろうかという意志が垣間見えた。

「おいおい劣等生、ここは通さねえぞ」

 小太りのジャンバルジャンが尊大な態度で立ちふさがる。

「怪我をしたくなければ、とっとと帰りな」

 そう言いながらもビンギルスはジルトニスの後ろにまわりこんで、逃さないようにしてくる。

「まったく、言うこととやることが違うのはどうしてですか?」

 一方のジルトニスに動揺した様子はなく、むしろ飄々とした態度である。

「俺たちは姫さんは傷つけるなと言われたが、それ以外は言われていないんだよ!」

 ジャンバルジャンが隠しナイフを取り出して、いつでも襲いかかる態勢になる。

「血の気が多いことで。私としてはお嬢の無事が確認できればいいんですがね」

 ジルトニスは独り言のようにぼやいた。

「安心しろよ。次、目覚めたときはベッドの上だからよ!」

 ビンギルスが指サックを装着して殴りかかる。挟撃されれば何もできまい。それが二人の必勝パターンだった。自分たちはグルンナインのおまけではない。

 ――それをたっぷり教えてやる! 

 そう言おうとした瞬間、二人の視界は空転したかと思うと真っ白になっていた。何が起こったのかはわからない。

 だが、二人が目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。


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