0XX プロローグ×遥か空より
誰かが言った。
貴方は特別なのよと。
誰かが言った。
お前は生きねばならないと。
誰かが言った。
お前は可能性だと。
でも私は思った。
そんなものになんて、なりたくないと。
でも私に選択肢はなかった。
私はそのためだけに生まれたのだ。
それがその人たちの願いであり、覚悟だったのだ。
その人たちと別れたくなかった。
その人たちとずっと一緒にいたかった。
ただ、私の側にいてくれれば、それで良かった。
今となってはすべて、もう遅い。
もう変えることはない。もう止められない。
そして、じきにそう思うことすらなくなるだろう。
私はもうすぐ全て忘れてしまうのだから。
こことは違う、新しい大地に降りて、そこで生きていくのだから。
身体がゆっくり落ちていくのがわかる。
意識は少しずつ闇の中へと落ちていく。
愛しかった全てと別れて。
見たこともない世界へと私は誘われていく。
そこには私という存在は連れて行くことは許されない。
懐かしい記憶も、この思いも、今ここで捨てていかなければならないのだ。
次目覚めた時、どうかこの気持ちが風化していませんように。
記憶も、思いも、叶えられなかった願いも、全てなくしたとしても、どうか、どうか。
お願い....