そして彼女は名を吹雪と言った……
降りしきる雪の中、男が白色に覆われた山道を一人歩いている。男は地面の雪を払うと、足下から顔を覗かせてのは凍り付いた水面。男は腰に下げたノコギリで氷を器用に切り出し始めた。
縄で縛り、ソリで雪の上を滑らせるように氷を洞窟へと運ぶ作業。全ては夏の為。男は懸命にソリを引いた。
洞窟の入口は酷く雪で覆われていた。男は目印の棒を頼りに手探りで雪を掘り進める。雪は固く、一度溶けかけた物が再び凍り付いていたため掘るのにとても苦労した。
ようやく入口に達したとき、男は洞窟の中から顔を覗かせる少女と目が合った。
「…………」
「…………」
二人は見つめ合ったまま動くことが出来ずにいた。男の頭には次第に雪が積もっていく……。
「中……入りませんか?」
「……んだな」
男はソリを引き、氷と共に洞窟の中へと入った。洞窟の中はそれなりに寒く、外よりはマシ程度であった。男は暗い洞窟の中で小さな灯りを付ける。少女は白い長襦袢を着ており、季節がら当てはまる物は一つしか無い。男は意外と冷静な顔で少女を見ていた。
「……雪女け?」
「……はい。そう言う貴方は人間ですね」
少女はソリに乗せられた氷の上に腰掛け、横座りで男を見た。
「私を見て驚かない人は初めて見ました。ここに閉じ込められて困っていたのです。助けて頂いてありがとうございました……」
「オラは何もしてねだ……」
白銀の髪を粉雪の様にふわりと靡かせ、少女は白い手を男の手に重ねた。それはまるで柔らかい氷柱であり、少女から放たれる雪解けの様な香りが男の心を惹きつけようとしていた。
「お水……飲まれませんか?」
少女の指先が男の掌から手首へ腕へと緩やかに駆け上がり、肩から首筋、そして口の中へと入り込む……。少女の指先が溶ける感覚が男の口の中から伝わるが、男はその間にも少女から目を逸らすことは出来なかった。白眉に長いまつげは雪が付いており、男は溶けること無い雪と至近距離で伝わる冷気から彼女が本物であることを確信した。
「そげだに近付いたら溶けちまうで……」
男は自分の体が何故か熱を帯びていくのを感じていた……。そして、少女が指を放し振り向きざまに長襦袢を開けさせた。背筋に広がる銀世界に男の劣情は凍える事無く雹の様な激しさで少女の背中から抱きしめた!!
少しばかり短くなった指先からは水が滴っており、それは雪女の策略の証、所謂惚れ薬である。男を誑かし子種を頂く、そして新たな雪女を授かるという訳だ。雪女からは雪女しか生まれない為、必然的に相手は人間になる。それ故如何なる策を用いても生き残らなくてはならないのが彼女等の辛いところなのだ。
「好きにして下さって構いませぬ……」
その雪山は丸みを帯びて美しく、雪の結晶の様な陰毛がより男の何かを掻き立て沸き上がらせた。
男は最後の一降りの冷静さで少女に問う。
「……名は?」
少女は微笑みただ静かに男の手に指を重ねる……。
読んで頂きましてありがとうございました!
これが私の真面目なこの企画への回答です。




