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どこにもある異世界小説  作者: 秋野ふう
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なぜだろう


まずはどこから話そう。

そうだ。私が若いごろ、冒険者ギルドでバイトしてたことがあって、そこで非常に驚いたことがまだ覚えてる。

上はすごく腕まで露出していて、下半身には変な青色の薄い布だけを着て、人間族の人が無装備のままいきなり私のギルドにやって来たことがある。

何をしたいかとうちのギルドお姉さんが聞いてみたら、冒険者になりたいですって。

は? 装備ゼロ、体も弱々しく見えた人間が冒険者になるだと?


昼間から酒を飲んでいる奴らは楽しみを見つけたかのように、彼を笑ってたのさ。

彼はしつこくスキル検定を要求して来るので、仕方がなくやってやった。

すると案の定、スキルゼロ、ステータスも普通の人間並みだったのさ。

驚いたことに、彼は顔を膨らませ、赤く染めながら、バカなそんなはずがない俺は選ばれた者に違いないって言ってた。

何を話しているのか私は理解不能だった。ただただ彼が猿に見えた。

彼は憤慨しながら、うちのギルドから出て行った。


そのあと私は何度も彼を見かけることがあった。

一回は私がバイトし終わって、夜の帰り道。

 あの日は疲れたので、いつもは寄らない近道から帰ることにした。

 暗い小道で、一人の人間がいる気がした、光が微かに彼の眼を照らす。

 その目は左右にうろうろしていた。まず最初に感じたのは怖がり、次に来るのは彷徨、そしてその一番底には凶悪も隠されているようであった。

 私は服を叩き、急いであの道を通過した。

 彼の服装は相変わらずあの変な格好、風も強くなってきて、冷える天気なのに。

 あんまり細かくはわからないが、きれいだった白い上着に黒い汚れが覆っていた。


 二回目、彼にあったのは、ある休日の昼間で、私が装備屋さんへ行って、バイトで貯めたお金で装備を更新しようとする途中さ。

 「出ていけ、この貧乏泥棒!」

彼は蹴られて、勢いで道端で倒れた。

 前回はまだ少し希望が見えるような目が、もう萎んでいる。痩せた腕で自分の体を起こそうとしている。

 揺らぎながら、足の力を借りて、ようやく立つことができた。

 上着がぼろい布ではあるが、保温性はあっただろう。髪は最初の整えたのと違い、一本一本が油生えているようで、暗くて汚い。

 私はそのまま彼が視線から消えるのを見届けた。


 記憶中にある最後、彼を見かけたのは、城外の汚水の排水口であった。

 全身が常に震えていて、口の中には何の話かわからないようなことをつぶやいている。

 微かに単語が聞こえる、「勇者」「俺」「魔王」とかいう。


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