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ほんの数秒程度の反則。


 好きでついて行ったわけじゃないし、むしろ無理やりだったのに何でわたしは説教を受けているんだろうか。もちろん助けられたことには感謝しかないけれど、もっと優しい言葉くらいかけられてもおかしくない。


「みつきって……」

「――う、うん?」

「マジでバカだろ? 俺が来なかったら間違いなくあいつらにヤラれてたんだぞ? てか、残業の小間使いがあんな下らない所で道草を食ってるとかあり得なくね?」

「バッ――」

「うん、バカって言った。反論は無駄だから」


 助けてくれた上に今は、公園の遊具の狭苦しい所で無理やり密着しながら隠れている。だから無駄に動悸がおさまらなくて、もしかして……なんて高鳴りさえ感じていたというのに、何だこの年下。ムカつく……。


「助けてくれとか言ってないし、そもそもあなたこそ何であの場に丁度良くいたのか聞かせてくれる? もしかしなくても追いかけて来ていたとか? それこそ怖いんですけどー」


「へー? 助けられたくせにそういうこと言うかよ。俺よりもいい大人なくせしてお礼の一つも言えないとか、年下だとか学生とか人のこと言える立場かよ」


「逃げようと思えば逃げれたし、大体、学生はとっとと帰っておけば――」

「しっ――!」

「――っ!?」

 

 え、嘘……なに……これ? 今ってキスされて……る? いくら反論されるのが嫌だからって口を封じるとかガキなの? それもキスで黙らすとか軽すぎる。初めてのキスでもないけど、何でこんな奴にこんなこと。


「……っはぁ……行ったな。もう来ないはずだけどもう少しここにいとくか……って、痛ってー」

「な、何してんのマジで! 何勝手に人の唇奪うわけ?」

「狭いし痛いし、人のこと叩くなっての! 仕方ねえだろ、さっきの奴等がしつこく来てたみたいだし、みつきの声がうるさかったし、塞ぐしかねえだろ」

「そ、そんなことで人の唇を奪うとか……最低すぎる」


 こんなガキと一緒にいたっていいことなんてない。さっきのチンピラもいなくなったみたいだし、さっさとこの場から離れた方がわたしの為になる。こんな下らないコトでキスするような奴の傍にいる方が危ないだろうし。


「てか、行くし」

「行くなって! また見つかったらどうすんだ? 会社にも戻れなくなるんだぞ」

「あんたとここでこうしている方が最低なんですけど? てか、腕離して! もっかい買い直して戻るから」

「……じゃあ行けばいいんじゃね? 俺は知らねえし。面倒見るつもりもない。ただの学生だし」

「そうでしょ? なので、帰っていいよ。お疲れ」


 ……そう思って立ち上がったのに、情けないことに足の震えが止まらなくて上手く立ち上がりも出来なかった。恐怖心ってそう簡単には消えてくれないようだ。となると、コイツの傍でしゃがみこんでいるしかないってことになるけれど、それはもういいので強引に立ち上がった……はずなのに。


「――」


 時間にしたら数秒程度。意表を突かれてさっきとはまた違う奪われ方をされていた。なるようになれ。


「さすが学生……キスも慣れたものってわけか~」

「……送る」

「いや、いいし」

「言うことを聞け!」

「あー……じゃあ、社に連絡しないと」

「それも俺がする。だから、離れるな。マジで」

「――そうしとく」


 これって、本気? どっちが本気で、下らないことなのかな。単に吊り橋効果な感じがするけれど、恐怖心が拭えないのは紛れもないことだし、こうなれば流れに身を任すしかないっぽい。未遂は勘弁して……。

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