表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

綺麗ですねなんて言葉は噓っぱちって気づこうか。


「邪魔っす」


「はぁ? それひどくない?」


「や、ひどくは無いですね。正直に言ってるだけなんで。てか、いつもその辺りでつっかえてるのを見ますけど、見えない棚でもある?」


「あるわけないじゃない! バカなの?」


「俺はあんたより賢いですけどね。賢くなかったら送っていけないだろうし」


 くぅっ……酒に呑まれて送られて、下着まで見られたわたしには何も言えない。だけど、職場でその態度はあり得ない。立場はどう見てもわたしの方が上だし。忙しい職場だから、通路はいつも誰かとすれ違う。それも書類を片手もしくは、両手のままで。


 それなのに、意識もしていないのに何でこいつとすれ違うんだか。単に小間使いをされている率が高いだけなの?


「あー、俺はパシリじゃないぜ? 優秀すぎるから使われて、いや、使ってくれているだけだし? そういうみつきは足手まといだからじゃね?」


「うるさい! 学生に分かってたまるか」


「……どちらへ? もう暗いけど、外に小間使い?」


「残業者に買い出し! ついてくんな!」


「行くわけないだろ? 俺は優秀……」

「はいはい、分かってますから! 学生くんは残業もしなくていいくらいに優秀だものね? 買い出しに行くわたしを敬いながらタイムカードを差し込んで帰りなさいよね」

「なんだそりゃ」


 面倒くさい! 下着くらい見られたって何も起きないし、起ころうともしなかった。そもそも記憶を失う位呑まれたわたしには、男の気配は近づかないわけだし? 学生のあいつも興味本位で話しかけてるだけでしょ。


 まだ夜の7時くらい。冬のこの時間はすでに暗く、繁華街のライトアップだけは眩しさをアピールしているけれど、わたしにその眩しさを当ててくるあたりが嫌味っぽい。


 酒専門店で安売りのチューハイとかを買いたい気持ちを抑えて、おつまみと清涼ドリンクを買い込む。レジを終えた頃には、両手にズシリと負担のかかったビニール袋がわたしを攻撃している。


「……しょっと」


 手に重みのある物を数分以上持ち続けているだけで、手のひらは赤みを見せる。それが嫌で何度も持ち手を変えて会社まで持っていく。それはいつもやってることじゃなく、たまたまだった。


「すみませーん、そこの両手のビニール袋持ったお姉さん!」

 

 へ? わたしかな? てか、イケメンが2人とワイルド系な男が一人? いや、女性も一人いるかな?


「はい?」


「さっきから見えてて大変そうでしたけど、買い出しとかです? 俺らが手伝いますよ?」


 うわ、どう見ても胡散臭い。こんな嘘な親切なんていらないんだけど。でも、少しだけ持ち手を変えたい。その数秒だけでも持っててもらおうかな。なんて、アホでした自分。


「あ、じゃあ、持ち手を変えるので右手のビニール袋だけ……」


「いや、両手が辛そうだし。せっかくそんな綺麗な肌をしてるのに、痕をつけるのは俺たちの心が悲しいんで」


「はぁ、どうも……」


 綺麗な肌なんて言われたの、いつ以来だろうか。この言葉で怪しいとか思わないわたしがバカだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ