褒められたら喜ぶに決まってるでしょ?
会社の飲み会帰り、一緒に帰りたくもない大学生倉科と帰らざるを得ない状況になった。節約しないと生きていけない。って言うのはもちろん大げさな表現だけど年齢が上がるにつれて、お金は貴重なものになっていくのは事実なわけで。タクシーで帰った方が本当は早いし、歩いて帰るより楽なのに何で合わない奴と歩くハメになったのか意味不明。
「てか、酔ってんの?」
「酔ってません! っとと……」
「言ってる傍からマジか。芸人かよ」
「うるさい! 身内で盛り上がって全然飲んでない学生は黙ってろっての」
「見てないだけで割と飲んでるけどな。っていうか、俺のこと見てたの? 暇っすね」
「ガキのくせに……っと――あっ……」
「おい、フラフラして誘うのは古いぞ? 仕方なく支えてやったけど、惚れなくていいから」
「誰が!」
助けてくれなんて一言も言ってないのに、何でそうやって人のパーソナルスペースにズカズカと入って来るわけ? これだから年下は。しかも平気で腕とか腰とか触れてくるなんて、コイツ相当遊び慣れてる?
「てか、普段何食ってんの? 腕とかプヨってんだけど、肉系? ま、触り心地はいいけど」
「セクハラ! 舐めてんの? ガキだからって何でも許すと思うなよ?」
「ガキって、大学生舐めてんの、そっちだろ。てか、意外に肌綺麗なんだな。エステ通い?」
「ノーコメント」
こんな風に自由に人の肌に触れてくるだけでも嫌なのに、手入れのことまで聞いて来る無神経さが嫌だ。だけど、こんなガキでも「肌綺麗だな」とか、こんな何気ない言葉だけでどうしてわたしは嬉しいのだろう。
「てか、歩けっての! 甘えたくないって言ってる割に俺に支えられまくりとか、言ってることと違いすぎねえ? 酒に呑まれてる年上って情けなさすぎんぞ」
「あーうるさい! わたしは寝る!」
「マジかよ? 寝るってどこで……っておい! そこは人の家の敷地……」
「うるさいうるさいうるさい!」
「うわ……マジで引く」
あろうことかかなり悪酔いしていたわたしは、記憶をどこかにやって大学生である倉科に絡んでいた。しかも、途中から眠気とリバースのコンボが襲ってきたのでどうでもよくなっていた。
「あんた、みつきの家はどこだよ? 個人情報かもだけど、そこに置いとかねえと俺もやばそうだ」
「あっち」
「……とにかく引っ張って行くから。吐くなよ? 幻滅の二乗とか最低すぎるし」
「はいはい、あっちですよぉ~……」
最悪すぎる奴に送られて、わたしは簡単に家の場所を教えてしまった。次に気付いたのは朝になるけど、もしかして最低な朝になってたりするのだろうか。