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アントナイト~蟻ほどの騎士~  作者: 花言葉
ドワーフの穴
9/33

 エリーゼが気が付いたときには、大分馬車は走っていた。外に見える景色は、森の真ん中で、木がたくさん生い茂っていた。

「エリーゼ様、お目覚めになったのですね?」

「う、う~ん、ここは、どこかしら? 妙に揺れるわね」

「乗合馬車の上ですから」

「!」

 エリーゼは、急に旅に出たことを実感した。カール公爵の反逆を防ぐために出て来た。だが、カール公爵は、本当に国を売る気があるのかどうかもわかりはしない。

(もし、勘違いだったら、私、ひどい事をしているのよね)

 少し考えようと思ったが、馬車の揺れがひどくて、集中して考える事が出来ない状態だった。

(これだから、庶民の乗り物は……)

 少し、イライラしてそう思ったが、自分で決めたことだと心を律する。『アントナイト』、この存在が、絶対、解決に導いてくれると、エリーゼは、確信して疑わなかった。

 乗合馬車は、ガタガタと音を立てて進む。

 一緒に乗っている人は、大きなリュックを背負った男の子と、占い師か魔女のような女の人、筋肉自慢の大男がいた。全員離れて座っている。

「エリーゼちゃん、もしかして、あいさつでもしようと思った?」

 アルーが、きょろきょろしていると声をかけて来た。

「……」

 少し、あいさつするべきか悩んでいたので、一応頷いた。

「何で、あの人達、離れて座っているかわかる?」

「? わからない」

「あのね、荷物を取られたり、因縁をつけてお金を取ろうとする輩がいるから、関わらないようにしているんだよ」

「つまり、あいさつは、危険だと言いたいのね」

「その通りだよ」

 アルーは、良くわかったねと顔で言っていた。

(その位、私だってわかるわよ)

 少しアルーの態度に怒りを覚えたが、黙って座っていた。


   ☆ ☆ ☆


 いつの間にか、乗合馬車は終点に着いた。乗っているのは、大きなリュックを背負った男の子だけで、他の人は、途中で降りた。

「さあ、次は、どうしますか?」

 アルーは体を伸ばしてルシードに訊く。

「少しはお前も考えろ」

 ルシードは、イライラした態度でそう言った。

「考えても良いよ、でも、俺は、情報屋だから、いろいろ知っている。そのせいで、選択肢がたくさんになっちゃうと言う問題がある」

「そうよね、きっと、色々な所で似たような話を聞くでしょうから……」

「それで、まず、ここの地図、北のロックポックでは、どんな話を聞いた?」

「そうだな、小さな人の住む場所が地下にあるって聞いたな、ここから丁度西に一キロ行ったところにいるらしい」

「行ってみよう」

「うん」

 エリーゼは、力強く頷いた。

 西に一キロ、まっすぐに行けば近いのだが、そうはいかなかった。

「大木が塞いじゃっているね」

 そう、目の前には、大きな大木が立っていたのだ。

「でも、これ、とても立派な木」

 エリーゼが、大木に触っていると、大きな穴がある事に気が付いた。

「ねえねえ、この穴、何だと思う?」

「どれどれ」

 その穴は、とても深く、落ちたらケガをしそうな程だった。

「この中に、アントナイトいないかしら?」

「う~ん、行ってみる?」

 アルーは、ロープを取り出してそう言った。

「俺は、反対だ。エリーゼ様がケガをしたらどうしてくれるんだ」

「エリーゼちゃん、行きたい?」

「うん」

「どうするルシードさん」

「わ、わかったよ、行くって」

 アルーは、持っていたロープを木に引っ掛けて、エリーゼの体に巻いてくれた。しっかり縛ったので、少しきつい。

「ぜったい、ロープを離しちゃだめだよ」

「はい」

 するすると、エリーゼの体は、暗闇に入って行く。心の中は、好奇心でわくわくしていた。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫よ」

 そして、エリーゼは、地下に着いた。何も見えなくて困っていると、アルーとルシードが降りてきた。

「二人共、ロープは?」

「俺は、鍛えているので、この位の高さは、平気です」

「もちろん僕も、そして、カンテラだよ」

 アルーの持っていたカンテラに火をつけると、辺りが明るくなった。そして、辺りを見ると、色々な道具が置いてあった。

「お肉とチーズに、金属の固まりがある」

「何か住んでいるな」

「アントナイトかな?」

 エリーゼがわくわくした気持ちでそう言うと、何かにぶつかった。

「侵入者、侵入者」

 ぶつかった物が急に騒ぎ立てる。よく見ると、ひげの生えた小人がいた。背は低くエリーゼの膝上位の高さだ。

「何、この生き物」

 エリーゼは、パニックを起こしていると。

「ドワーフだよ、ドワーフ、よく本に出て来るだろ」

 アルーが冷静にそう言った。

「本物のドワーフ!」

 エリーゼの目はとても嬉しそうに輝いていた。

「ドワーフは、地下で暮らしていて、警戒心がとても強く、敵を見つけると容赦のないやつさ」

「それって、私達、敵だと思われているのよね?」

「あ~、うん」

「それって、大変な事なのでは?」

「うん、そうだね」

 アルーは気の抜けた返事をした。

「ちょっと待って、私達、ひどい目に合わされる、直前なのよね?」

 エリーゼは、アルーの落ち着いた態度に驚いていた。

 そんな中、ドワーフは、集まってくる。結局わらわらと、一〇〇人ぐらいに囲まれてしまった。

(どうしよう)

「こいつら、敵だ。捕まえろ」

 ドワーフは、そう言って、ロープでエリーゼ達三人を縛った。そのまま、もっと深い地下牢に入れられてしまった。

「どうしよう、アルー」

「大丈夫だから、要は敵じゃないって証明すればいいんだよ」

「どうやって?」

「ヒミツ」

 アルーはにやりと笑った。


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