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 しかし、次の日、ルシードから手紙があった。

『あの男が、アーヌストの城下町で働いている』と書かれていた。

(どう言う事?)

 エリーゼは、激しく疑問に思った。なぜ、山の上に、アーヌストの城下町で働いている人がいたのか? その謎を解くため、ルシードは夜、酒場『Vanquish』で彼を探すと書いてあった。

(一体、何が起こっているの?)

 エリーゼには、いまいち、情報の意味が解らなかった。しかし、山で会った彼が、城下町で何かしているのだけは分かった。

(明日、情報が入り次第動くわ)


  ☆ ☆ ☆


 次の日、ルシードからの手紙には、『どうやら彼は、アルーと言う情報屋だ』と書いてあった。

(情報屋?)

 山にいた感じだと、情報屋には見えなかった。

『今晩『Vanquish』に行ってみましょう』

 ルシードに手紙を送った。

『わかった。できるだけ、みすぼらしい恰好で来てくれ』

 その文から、高級な酒場ではなく、一般人が通う酒場なのだと思い、セリーヌの服を借りた。地味な、茶色のワンピースを着て。

「あとは、抜け出すだけね」

 一階の多目的ルームの窓の鍵を開けておいたので、こっそり抜けだした。

(お父様、お母様、ごめんなさい)

 走って、酒場まで向かった。

(たしか、ルシードの地図だと、ここよね?)

 酒に酔った人が、ガーデンテラスで伸びている。酒樽をイメージした緑色の建物に『Vanquish』の看板がかかっていた。

「だから、俺は、酔ってない」

 たくさん、ビールなどを飲んでいる男がそう言うが、酔っているのは、丸わかりだった。テーブルの上に乗っている、十杯のジョッキが長居している事を表している様だった。

「それで、キャサリンに彼氏が出来たって本当?」

「ああ、本当さ、この眼で見た物、路上で恥ずかしげもなくキスをする相手はどういう相手なのかわかるだろ」

 陽気なしゃべり方でそう言っているのは、この前会った男だった。

「情報料、いただきます」

「仕方ないわね」

 赤い髪の毛の女が、髪をいじって、イライラしながら金を払った。

「またのお越しをお待ちしております」

「エリーゼ」

 声をかけて来たのは、ルシードだった。

「ルシード、あの人ね」

 山で見た通り、金髪に黒い目、陽気そうな雰囲気、間違いなかった。恐る恐る声をかけてみる。

「あの~、アルーさんですよね?」

「あれ、エリーゼちゃん」

「!」

(どうしよう、ばれてる)

「エリーゼちゃん、やっときてくれた。君にとっておきの情報があるんだ。カール公爵がアーヌストを売ろうとしていると言う情報が入ってね」

「カール公爵が?」

「そう、あの人が裏切ったら大変なことになるよね」

「そうね、でも、それは、あなたの思い込みなんじゃないの?」

「いいや、情報源は言えないが、とっても信頼できる所なんだ」

「そ、そう」

「エリーゼちゃんは、酒の飲める年齢かな?」

「一応十六よ」

「飲んで良い年じゃないね、もう少し大人になってから、酒場で飲もうか」

 そう言って、エリーゼの手を取り、店の外まで連れて行った。

「これで、大丈夫だね。あとは、そこの怖いお兄さんに連れていってもらいなさい」

 怖いお兄さんとは、ルシードの事の様だ。

「あの~、アルーさんは、何才なのですか?」

「十八なんだけど、若く見えるでしょう?」

「そうね、あの、もう一度会いたい時はどうしたらいい?」

「呼んだら出てくるよ、アルーって大声で」

「本当?」

「本当さ」

 アルーのジョークだと思って、笑っていると、ルシードが近づいてくる。

「それじゃあ、アルー、また会いましょう」

「うん、またね」

 ほけーとしていると、ルシードが手を握って来た。

「酒によってしまわれたのですね、わずかに頬が赤くなっていますよ」

「そ、そうみたい、でも、ルシード、きいて、カール公爵がアーヌストを売ろうとしているって本当かしら?」

「彼を信じるなら本当でしょうけど、信じないのならうそでしょうね」

「私は、信じてみたい」

 エリーゼは力強くそう言った。

 城に入るため、一階の窓を開けた。中に入って行くと、誰もいなかった。

(明日、お父様に訊いてみよう)


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