8
食堂に着くと、ステーキが焼かれていた。
「おお、うまそう」
アルーは、テーブルの近くのイスに座り、嬉しそうにしている。
「エリーゼは、こっちのメイドとか騎士が使う食堂は初めてか? 俺は、初めてここでご飯を食べた時、びっくりしたぞ」
「どうして?」
「食材が豪華だからさ」
アルーがおどけてそう言った。アルーは、ルシードをふった事を気にしていると思って、わざとふざけている様だった。
「考えるだけ無駄だよ、ルシードさんは、戻ってこないって」
「そうだよね」
エリーゼは、苦笑いを浮かべる。
アルーは、出されたステーキにナイフを入れると、肉汁があふれ出てきた。フォークをぶすりとさして、口に運んだ。
「うん、うまい」
アルーの側にいれる。それだけで幸せだった。
(これ以上を望んではいけないのね)
エリーゼは、胸に手を当て、深呼吸をした。
「私の分もステーキちょうだい」
「は、はい」
料理人は、少し戸惑ってそう言った。
その日のラジオは、カール公爵の事ばかり流れていた。
『公爵の地位を剥奪されたようです。カールさん、カールさん』
インタビュアに囲まれて、カールも困惑しているだろうと思った。なぜそう思ったのかと言うと。ラジオには、リポーターが、色々な人や物にぶつかる音が入っていたからだ。
『カールさんが、差し押さえられた豪邸から出てきます』
後からわかった事なのだが、カールは、爵位をちらつかせて、多大な借金をしていた。爵位のない今は、ただの男、お金を払えと迫られているようだ。
「カールさん、いい気味だわ」
エリーゼは、部屋で、アルーとラジオを聞いていた。
「まあ、そうだな」
アルーもカールの事は、同意見の様だ。
『カールさん、一言~』
リポーターがマイクをカールに向けたのか、ザッザッと音がする。
バチンとラジオの電源を切った。
「カールの事は、もういいや、私、久しぶりに書庫に行こうと思うの」
「ああ、わかった」
アルーは、見送ってくれた。
エリーゼは、書庫の中で、クロックの三部作を取った。
(これが、私たちの始まりだったのよね)
初めは、山に登って、アルーに会った。盗賊に間違われたのではなく、アントナイトの村を荒らしに来たと間違えられたのだった。
(なつかしい)
次に、酒場で情報をもらって、家出して。
エリーゼは、フフッと笑った。そして、アントナイトの本を取った。
「これ、アーノルドが書いた本だったんだ」
著 アーノルド・アントと書いてある。
エリーゼは、その後、部屋のベットに入り、ぐっすり眠った。




