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アントナイト~蟻ほどの騎士~  作者: 花言葉
カール公爵の反逆
31/33

 アーヌスト城へ着いた。

「カール公爵、着きましたよ」

 カール公爵は、すっかり落ち着きを取り戻し、優雅に歩いている。

「カール公爵、中で、王が待っています」

 アルーは、そう言って城の中へ入った。

「エリーゼ様がどこにいるか知っているか?」

 入り口の門番に聞いたところ。

「わかりません」

 と帰って来た。仕方がないので、王様の所に直接向かった。

 謁見の間に向かうと。

「アルー、ご苦労だった。話は、エリーゼに聞いた。うまくやるからエリーゼの隣で見ていなさい」

「はい」

 アルーは、頭を軽く下げて返事をした。


  ☆ ☆ ☆


 カール公爵が謁見の間へ入って来た。

「こんにちは、みなさん、そんなに怖い顔をしなくてもいいのですよ」

 場を和ませるために行ったのだろが、誰一人笑っていない。

「失礼」

 カール公爵は、空気を読んでむせた。

「エリーゼさんを監禁したこと、お詫びを申し上げます」

「お詫びで済む問題ではない」

 王様は怒った雰囲気でそう言った。

「エリーゼさんが、勝てる戦争なのに、戦争はお嫌だと言うからです」

「それはそうだ。私達は戦が嫌いだからな」

「そこです。私は、兵士達に度々会いに行っています。戦いを求める者もいらっしゃいますし、アーヌストの戦力は、とても強いと思います」

 カール公爵は、開き直ってそう言うが、みんなの視線は冷たい。

「皆さん、賛成していただけないでしょうか?」

「アーノルド、この男に一言頼む」

「はっ、今まで、兵士に会っていたのは、情報収集のためだったと、ある方から聞いています」

「何!」

 カール公爵は、その話をばらしそうな相手を考えている様だった。

「アインか? アインがそう言ったんだな、あいつは、私を売ったんだ」

「いいえ、アインさんでは、ありません」

(まさか、アーノルドがアントナイトだから知っているとは、言えないものね)

 エリーゼは、心の中でそう思った。

「それでも、その情報が間違いだと言う事もあります」

「それはない」

 王様もアーノルドの話を信じている様だ。

(当たり前だけど)

 エリーゼは、心の中でそう思った。その話をばらしたのは、きっとカール公爵自身なのだろうとわかっているからだ。

「それでは、国民に問うのはどうですか? 勝ち戦をやらないと言えますか?」

 王様は眉をしかめ。

「カール、お前は、本当に愚かだな」

 ピーピーと音がして、ラジオのスイッチが入った。

『匿名のニュースです。カール公爵が、戦で不正を働き、アーヌスト王国をラカシアに渡そうとしているそうです』

「な、なぜ、ラジオにそんな情報が……」

 カール公爵は焦った。

「この情報がウソだとしても、君の立場、信頼は、取り戻しにくいだろう、さあ、どうする? 自白する気になったか?」

「ああ、わかったよ、もう少しだましていようと思っていたのにな」

 カール公爵は、さっきまでの朗らかな様子を崩して、怖い顔をして言った。

「アーヌスト王国と、ラカシアの両方が手に入れば、私は、最強の権力を手にできた。ラカシアの王は、無能だ。私にほいほい騙される。あいつならいつでも、蹴落とせる」

 カール公爵は、王様を見つめて。

「あんたが一番邪魔だったんだ。私の話を聞こうとしない、私を成り上がりの公爵としか見ていなかった。あんたは、騙せそうになかったからね」

「成り上がりの公爵だとみていたのではない、君が、心の中で、王を蹴落とそうとしていたのが丸わかりだっただけだ」

 王様がそう言うとカール公爵は。

「すべて、わかっていたのですね」

「君をいつ裁こうか悩んでいたのだが、まさか、このような形になるとは思っていなかったよ」

 カール公爵は、うなだれて。

「私を罪人にして、牢に入れなさるのですか?」

「いいや、君は、企てただけで、すべてはやっていない、爵位をはく奪させてもらうが、それ以上のことはしない」

 カール公爵は、顔をしかめた。こういう男は、殺されるよりも地位をはく奪される方が、嫌な事だろうと思った。

「いっそ、殺してしまって下さい」

「いいや、君は、やり直すんだ。田畑や店を持って、下に住む人たちの事を良く知って、そこから始めるといい」

「私が下々の物と同じ生活をするだと、考えられない」

 カール公爵はヒステリックにそう言った。

「だが、君には、その罰がお似合いだ」

 王様は、そう言って、カール公爵を謁見の間から追い出した。

「大変だったけど、よかった」

 エリーゼが、そう言うと王様は。

「エリーゼも、立派になったな、アントナイトを使いこなしている」

「アルーのおかげよ」

「そうそう、僕が有能なおかげです」

 アルーは調子に乗ってそう言う。

「アルー、初めまして、私は、アントナイトのアーノルドです」

 アーノルドは、アルーに握手を求めた。

「ええっ! あなたもアントナイトなんですか?」

「そうですよ」

「そうなのよ、私のテストをしたのもアーノルドなのよ」

 エリーゼが嬉しそうにそう言う。

「昔々、私に話して聞かせてくれた伝説が、実は、とても身近なアーノルドの事だったなんて、わかった時は、拍子抜けたわ」

「不満でしたか?」

 アーノルドは、ジト目でこちらを見ている。

「いや、あの、今まで気付かなかったなんて、私って観察力不足だなあと思っていたのですよ」

「あなたにばれる様なら、アントナイトなんてやっていられませんからね」

 アーノルドは、しれっとしてそう言った。

「そうですよね」

 エリーゼもアーノルドに圧倒されて、文句を言えない。

「そう言えば、お父様、アントナイトは男にしか仕えないって言われたのだけど、それは、知っていたの?」

「知らなかった。アーノルドどうして教えてくれなかった」

「エリーゼ様には、アントナイトが必要だと思ったので、言いませんでした。試験の問題も作ってしまっていたからですね……」

「それって、いつ作ったの?」

「エリーゼ様が、生まれる前です。ファルドの子なら、国をまとめる王に成れると思いまして……」

「男だと思っていたのね」

「……」

 アーノルドは、気まずそうな顔をした。

(いつも、冷静だけど、時々あれなのね……)

「アーノルドは、エリーゼの事をかわいがっていた物な」

 王様がそう言うと、アーノルドは赤くなる。

(私がかわいいから問題を消さなかったのね、案外優しいのかも)

 エリーゼは、そう思いアーノルドを見つめる。

「何ですか?」

「いえ、アーノルドって、いい人だったんだな、と思ったの」

「いつもは、思っていないのですか」

「うん、いつもは、口うるさいおじさんだと思っていたわ」

「口うるさいおじさん」

 アーノルドは、悲しそうに言い、落ち込んだ。

「最近、エリーゼは、ルシードとよく一緒にいるが、もしかして、二人は良い仲になっているのか?」

 アーノルドがこちらを向いて、驚いた顔をしている。

「男が出来たのですか?」

「違うの、こき使っている。パシリです」

「そうか、それならいい」

「いいのか、エリーゼ、ルシードさんと本当は仲良いだろ」

 アルーが余計な事を言った。

「仲良くない、もう、仲良くしていられないと思う」

「もしかして、フラれたのか? あんなにエリーゼの事大好きだって言っていたのに……」

 アルーが怒ると、エリーゼは。

「違うの、私がふったの」

「ええっと、ルシードさんは、やっぱり好みじゃなかったのか?」

「え、ええ」

 エリーゼは、悟られないように笑った。

(本当は、アルーの事が好きだからふったのだけど、言ってはいけない事なのよね)

 少し悲しくなった。

 アントナイトの契約をする時、こんなに苦しい思いをしなければいけないなんて、思いもしなかった。

(伝えられないのが、こんなにつらいなんて)

 エリーゼは、下を向いた。

「そろそろ、お腹空いたし、ご飯食べに行こうぜ」

 アルーがそう言うので、食堂まで、歩いて行くことにした。

「エリーゼも腹減っているから、元気がないんだろ」

「うん」

 エリーゼは、アルーの後を追いかけた。


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