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アントナイト~蟻ほどの騎士~  作者: 花言葉
カール公爵の反逆
28/33

 エリーゼは、地下牢に連れて行かれていた。

「ここにお姫様が連れて行かれるなんて、誰も思いはしないだろう、しばらく入っているが良い」

 エリーゼは、足も腕も縛られて、猿ぐつわをされている。

「あなたを殺そうかとも思ったのですが、別な使い道を思いついたので、生かしてあげることにしました」

 カール公爵は、そう言って、牢の檻閉めた。

「あなたを利用するのは、最後です。それまで、精々大人しくしていてください」

 カール公爵は、去って行った。エリーゼは、見送る事しかできなかった。


   ☆ ☆ ☆


 アルーは、頭を使っていた。

「もし、自分がカール公爵だったら、姫をどこに隠す?」

「自宅」

 ルシードがそう答えると、アルーは。

「それは、足が付きそうだと思うが」

「それなら、城の中か」

 ルシードは、そう言って走り出した。

「ルシードさんが、歩いて探すと言うのなら、僕は、カール公爵の動向を見てから行動しようかな?」

 アルーはそう言って小さくなった。

 アルーは、カール公爵の部屋にドアのすき間から入って行った。

 カール公爵の部屋は、ブランド家具で埋め尽くされていた。よっぽど金があるのだろう、チェストも本棚もロゴが入っている。

 アルーは、話が良く聞こえるように、机の下で待機した。

「すべては、うまく行っている」

 キーとドアを開ける音がした。

「アイン、後は、戦争を仕掛けるべきだとラカシアの者に言うだけだな」

 アインと言うのは、部下らしい。

「でも、あの姫、ウワサを流していないと良いのですが……」

「あの姫は、地下牢に閉じ込めた。出てこれまい」

(地下牢、なるほどね)

 アルーは、しばらくじっとして話を聞いていた。

「これから、ラカシアに行こうと思う、馬車の手配を頼む」

「はい」

(ついに戦争を仕掛ける気か……)

 アルーは、一つ考えた。戦争を防ぐ方法を。

(う~ん、手紙を書いておこう)

 すぐに、エリーゼの部屋に行き、手紙を書きポストに入れた。

(これでよし!)

「ルシードさん、ルシードさん」

 歩いて探していると、ルシードが飛んできた。

「アルー、何かわかったのか?」

「エリーゼは、地下牢だそうだ」

「エリーゼ様、今、さぞや苦しい思いをしているのでしょうね、すぐに救って差し上げます!」

 ルシードが、地下牢に走って行く。

「あっ、ルシードさん」

 アルーは、ルシードを追いかけた。そして、地下牢の入り口まで行くと、門番が立っていた。

「この中には、入れません」

「なぜだ」

 ルシードは、門番にかみついている。

「やっぱりそうなるか」

 アルーは冷めたようにそう言い、隣の部屋で小さくなった。そして、地下牢の扉のすき間に入った。そして、門番が見えなくなるほど走った。

「さて、エリーゼは?」

 体を大きくして、辺りを見渡す。大体、中に入っているのは、大柄の男と痩せた男だ。エリーゼは、女だから、すぐに見つかると思ったのだが、見つからない。

(ここは、一階、地下牢と言っていたと言う事は、もう一つ下があるはずだ)

 アルーは、階段を探した。だが、一行に見つからなかった。

(隠し扉か何か?)

 隠し扉や、隠し通路の場合、色が違ったりして、すぐわかるのだが、巧妙に作られた物は、そうもいかない。

 左の方へ向かっていくと、下を向いた。罪人がたくさんいたので、目を合わせないようにするためだ。

(エリーゼをこんなところに、いさせ続けるわけには行かないな)

 少し歩くと、床の色が微妙に違うような気がした。めくってみると、階段が隠れていた。

(一部だけ、布で覆ってもバレバレだろう)

 アルーは、この牢自体に入れないし、見つけられないとカール公爵が思っていたのだろうと思い、階段を下りた。

 地下牢は、真っ暗だった。水が滴る、ポタポタと言う音がする。

「エリーゼ」

 大声を出すが返事は無い。

「エリーゼ」

 もう一度読んでみたが、反応は無い。

(猿ぐつわでもくわえさせられているのかもしれない)

 アルーは、そう考え、一つ一つチェックしていくことにした。

「エリーゼ?」

 一つ目は違った。三つ目、四つ目も違い、七つ目、八つ目も違った。そして、十二個目。

「エリーゼ」

「うう~、うう~」

「エリーゼ」

 エリーゼは、腕を縛られて、動けずにいた。足も縛られているので、横に倒れている。

「大丈夫なわけないな」

 アルーは、体を小さくして、カギ穴に入った。そして、カギ穴をくるっと回すと、扉が開いた。

「エリーゼ、今、ほどいてやるからな」

 腕と足の紐をナイフで切り、猿ぐつわを外した。

「カール公爵はいない?」

「大丈夫だ。それより、ラカシアにカール公爵が向かうみたいだ」

「なんで、止めに行かなかったの?」

「そんなの、ナイトとして、あんたが大事だったからに決まっているだろう」

 アルーは、真剣な顔で言った。

「アルー」

 エリーゼは、涙を浮かべて。

「怖かったの、本当は、一刻も早く助けに来て欲しかった」

 そう言い、本当は、うれしかったのだと言った。

「それじゃあ、一丁、馬車を止めに行くか?」

「そうね」

 エリーゼは、ワンピースを整えて、走り出した。

「あっ、そっちじゃない」

 地下牢は、真っ暗、正直道がわからなくなっても仕方がないとアルーは思い、エリーゼの手を取った。

「いいですか、エリーゼ、絶対に手を離すなよ」

「うん」

 真っ暗な地下牢を歩き出した。アルーの持っているカンテラだけが光り、手のぬくもりで心が安心する。

(エリーゼを助けられた)

 アルーは、少し心が浮き立った。

 牢を歩いて行く中、エリーゼは、不安そうだった。

(そりゃあ、怖いよな、罪人が入っているのだから)

 アルーは、エリーゼをリードし続けた。

 そして、入口に着き。

「だから、エリーゼ様が中にいるんです」

 ルシードがまだ、門番と戦っていた。

「はいはい、門番さん、エリーゼ様です」

 アルーがそう言って、エリーゼを門番の前に出した。

「これは、失礼しました」

 門番は、本物のエリーゼを見て、慌ててカギを開けてくれた。アルーとエリーゼは、外に出る事が出来た。

「さて、ルシードさん、馬車を止めに向かいましょうか」

「は?」

「カール公爵が、ラカシアに向かうそうだよ」

「そうなの」

 エリーゼも頷いて走り出した。

 城の道を抜けていくと、外に出た。もう馬車が来ていた。

「こうなったら、エリーゼ、思いっきり、馬車に向かって僕を投げろ」

「でも、そんなことして、アルーは大丈夫?」

「アントナイトだから、体は丈夫にできている。だから、心配しないで、投げろ」

「そうね」

 エリーゼは、窓を開けて、アルーを馬車に向かって投げた。


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