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エリーゼは、地下牢に連れて行かれていた。
「ここにお姫様が連れて行かれるなんて、誰も思いはしないだろう、しばらく入っているが良い」
エリーゼは、足も腕も縛られて、猿ぐつわをされている。
「あなたを殺そうかとも思ったのですが、別な使い道を思いついたので、生かしてあげることにしました」
カール公爵は、そう言って、牢の檻閉めた。
「あなたを利用するのは、最後です。それまで、精々大人しくしていてください」
カール公爵は、去って行った。エリーゼは、見送る事しかできなかった。
☆ ☆ ☆
アルーは、頭を使っていた。
「もし、自分がカール公爵だったら、姫をどこに隠す?」
「自宅」
ルシードがそう答えると、アルーは。
「それは、足が付きそうだと思うが」
「それなら、城の中か」
ルシードは、そう言って走り出した。
「ルシードさんが、歩いて探すと言うのなら、僕は、カール公爵の動向を見てから行動しようかな?」
アルーはそう言って小さくなった。
アルーは、カール公爵の部屋にドアのすき間から入って行った。
カール公爵の部屋は、ブランド家具で埋め尽くされていた。よっぽど金があるのだろう、チェストも本棚もロゴが入っている。
アルーは、話が良く聞こえるように、机の下で待機した。
「すべては、うまく行っている」
キーとドアを開ける音がした。
「アイン、後は、戦争を仕掛けるべきだとラカシアの者に言うだけだな」
アインと言うのは、部下らしい。
「でも、あの姫、ウワサを流していないと良いのですが……」
「あの姫は、地下牢に閉じ込めた。出てこれまい」
(地下牢、なるほどね)
アルーは、しばらくじっとして話を聞いていた。
「これから、ラカシアに行こうと思う、馬車の手配を頼む」
「はい」
(ついに戦争を仕掛ける気か……)
アルーは、一つ考えた。戦争を防ぐ方法を。
(う~ん、手紙を書いておこう)
すぐに、エリーゼの部屋に行き、手紙を書きポストに入れた。
(これでよし!)
「ルシードさん、ルシードさん」
歩いて探していると、ルシードが飛んできた。
「アルー、何かわかったのか?」
「エリーゼは、地下牢だそうだ」
「エリーゼ様、今、さぞや苦しい思いをしているのでしょうね、すぐに救って差し上げます!」
ルシードが、地下牢に走って行く。
「あっ、ルシードさん」
アルーは、ルシードを追いかけた。そして、地下牢の入り口まで行くと、門番が立っていた。
「この中には、入れません」
「なぜだ」
ルシードは、門番にかみついている。
「やっぱりそうなるか」
アルーは冷めたようにそう言い、隣の部屋で小さくなった。そして、地下牢の扉のすき間に入った。そして、門番が見えなくなるほど走った。
「さて、エリーゼは?」
体を大きくして、辺りを見渡す。大体、中に入っているのは、大柄の男と痩せた男だ。エリーゼは、女だから、すぐに見つかると思ったのだが、見つからない。
(ここは、一階、地下牢と言っていたと言う事は、もう一つ下があるはずだ)
アルーは、階段を探した。だが、一行に見つからなかった。
(隠し扉か何か?)
隠し扉や、隠し通路の場合、色が違ったりして、すぐわかるのだが、巧妙に作られた物は、そうもいかない。
左の方へ向かっていくと、下を向いた。罪人がたくさんいたので、目を合わせないようにするためだ。
(エリーゼをこんなところに、いさせ続けるわけには行かないな)
少し歩くと、床の色が微妙に違うような気がした。めくってみると、階段が隠れていた。
(一部だけ、布で覆ってもバレバレだろう)
アルーは、この牢自体に入れないし、見つけられないとカール公爵が思っていたのだろうと思い、階段を下りた。
地下牢は、真っ暗だった。水が滴る、ポタポタと言う音がする。
「エリーゼ」
大声を出すが返事は無い。
「エリーゼ」
もう一度読んでみたが、反応は無い。
(猿ぐつわでもくわえさせられているのかもしれない)
アルーは、そう考え、一つ一つチェックしていくことにした。
「エリーゼ?」
一つ目は違った。三つ目、四つ目も違い、七つ目、八つ目も違った。そして、十二個目。
「エリーゼ」
「うう~、うう~」
「エリーゼ」
エリーゼは、腕を縛られて、動けずにいた。足も縛られているので、横に倒れている。
「大丈夫なわけないな」
アルーは、体を小さくして、カギ穴に入った。そして、カギ穴をくるっと回すと、扉が開いた。
「エリーゼ、今、ほどいてやるからな」
腕と足の紐をナイフで切り、猿ぐつわを外した。
「カール公爵はいない?」
「大丈夫だ。それより、ラカシアにカール公爵が向かうみたいだ」
「なんで、止めに行かなかったの?」
「そんなの、ナイトとして、あんたが大事だったからに決まっているだろう」
アルーは、真剣な顔で言った。
「アルー」
エリーゼは、涙を浮かべて。
「怖かったの、本当は、一刻も早く助けに来て欲しかった」
そう言い、本当は、うれしかったのだと言った。
「それじゃあ、一丁、馬車を止めに行くか?」
「そうね」
エリーゼは、ワンピースを整えて、走り出した。
「あっ、そっちじゃない」
地下牢は、真っ暗、正直道がわからなくなっても仕方がないとアルーは思い、エリーゼの手を取った。
「いいですか、エリーゼ、絶対に手を離すなよ」
「うん」
真っ暗な地下牢を歩き出した。アルーの持っているカンテラだけが光り、手のぬくもりで心が安心する。
(エリーゼを助けられた)
アルーは、少し心が浮き立った。
牢を歩いて行く中、エリーゼは、不安そうだった。
(そりゃあ、怖いよな、罪人が入っているのだから)
アルーは、エリーゼをリードし続けた。
そして、入口に着き。
「だから、エリーゼ様が中にいるんです」
ルシードがまだ、門番と戦っていた。
「はいはい、門番さん、エリーゼ様です」
アルーがそう言って、エリーゼを門番の前に出した。
「これは、失礼しました」
門番は、本物のエリーゼを見て、慌ててカギを開けてくれた。アルーとエリーゼは、外に出る事が出来た。
「さて、ルシードさん、馬車を止めに向かいましょうか」
「は?」
「カール公爵が、ラカシアに向かうそうだよ」
「そうなの」
エリーゼも頷いて走り出した。
城の道を抜けていくと、外に出た。もう馬車が来ていた。
「こうなったら、エリーゼ、思いっきり、馬車に向かって僕を投げろ」
「でも、そんなことして、アルーは大丈夫?」
「アントナイトだから、体は丈夫にできている。だから、心配しないで、投げろ」
「そうね」
エリーゼは、窓を開けて、アルーを馬車に向かって投げた。




