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アントナイト~蟻ほどの騎士~  作者: 花言葉
カール公爵の反逆
27/33

 しばらくして、目が覚めると、目の前にアルーがいた。

「エリーゼ」

 心配そうにこちらを見ている。よく見ると、手をつないでくれているようだ。なんだか恥ずかしかったので。

「ア、アルー」

 エリーゼは、照れて真っ赤になった。

「ごめんなさい、カール公爵に目を付けられてしまって」

「仕方がない事だ。それと、エリーゼ、僕に照れる必要はないぞ、見ろ、メイド達が楽しそうにうわさしているぞ」

「エリーゼ様は、やっぱり」

「ですよね」

 ニヤニヤしてこちらを見ている二人のメイドがいた。

「あ、あの~」

 ここで否定しても信じてもらえないと思い、ため息をついた。

(アルーは、恥ずかしくないのかしら?)

 アルーの顔を見つめたが、恥ずかしさなど、みじんも感じていないように見えた。

「エリーゼ、意識が戻ったなら、何か食べようぜ」

「は、はい」

 エリーゼは、頷いて、少し下を向いた。

(アルーは、アントナイトなのに、ドキドキするなんて、次期女王としては、失格な事ですわ)

 エリーゼは、心の中でそう思い一人沈んだ。

「元気ないな、エリーゼ、まだ怖いか?」

「えっと……」

(怖い? カール公爵の事ね)

「もう大丈夫、元気になったよ」

 空元気でそう言うと、アルーは、顔を近づけてくる。

(えっ、ええ~)

「熱は無いな」

 額をくっつけただけだった。エリーゼは、驚いて損したと思ったが、内心は、ほっとしていた。

(これ以上、アルーの事好きになっちゃだめよ)

「元気がない時は、背中を押すといいって言っていたな」

 アルーは、そう言って、エリーゼの背中を優しく押した。

(そう言う意味では、無いと思うけど……)

 撫でるように背中を押すアルーに心臓がドキドキしていた。

「エリーゼ、元気になったか?」

「うん」

 エリーゼは、笑顔を浮べ頷いた。アルーがあまりにも元気づけてくれるので、何だかうれしくなったのだ。

 その後、アルーは、ベッドの横に立ち、様子を見ている。

 食事が運ばれてきた。

 ヴィシソワーズスープに、焼きたてのパン、パプリカサラダと言う、シンプルな物だった。

「まず、僕が食べる」

 アルーが、毒味をしてくれている。

「うん、大丈夫だ。カール公爵は、毒を入れていない」

「アルー、もし、毒が入っていたらどうするつもりなの?」

「アントナイトに毒は効かないぞ」

「そうなの」

 エリーゼは、少し、アルーを失う恐怖が頭をよぎったのだ。

(アルーがいなくなるなんて、嫌だと思ったわ)

 そこにルシードが遊びに来た。

「エリーゼ様、体調を崩されたと聞き、エリーゼ様の好きな、いちごをいただいてきました」

「本当、ルシード」

「ルシードさん、まだ、あきらめていないんですね」

「アルー、お前は、アントナイトなんだろ、だったら、身を引け」

 ルシードが嫌味にそう言う。

「ルシードさん、その通りなのかもしれません。でも、アントナイトは、一番に主を守るのが仕事です。側にいないのは、契約違反です」

「そ、そうか」

 アルーとルシードが話している時、エリーゼは、いちごに手を伸ばそうとしていた。

「ルシードさん、あのいちご、誰から頂いた?」

「カール公爵ですけど」

「エリーゼ! そのいちごを食べてはいけない」

 アルーが、バスケットを取り上げた。

「やはり、毒が入っている」

 アルーは、いちごを食べながらそう言った。

「まさか、ルシードさんまで利用するなんて、悪魔過ぎる、あのおっさん」

「どう言う事なんだ? アルー、説明してくれ」

 ルシードは戸惑っている。

「ああ、カール公爵が、ついに動き出したんだ」

「カール公爵が?」

「国を売るつもりらしい、それが、エリーゼにばれている事がばれて、命を狙われているんだ」

「そうだったのですか」

「うん、そうなの」

 エリーゼは、仕方ないので頷いた。ベッドから起き上がり、パンを食べた。

「それじゃあ、警備は厳格な方がいいな、俺も警備に加えてもらう」

 ルシードは、そう言って、エリーゼの手を取った。

「ご安心下さい、エリーゼ様、きっと、守って差し上げます」

「よろしくね」

 エリーゼは、パンを飲み込みそう言った。

「しばらく、仮病を使うか」

「そうなるな」

「あの~、お手洗いに行きたいのですけど」

「は~、どうするべきだ?」

 ルシードが困っていると。

「メイド達と行ってきなさい、決して、一人になってはいけませんよ、もし、カール公爵がいたら、すぐ大声を出せ」

「はい」

 エリーゼは、メイド達とトイレを目指した。

 すると、カール公爵とばったり会ってしまった。

「エリーゼさん、お前に用事がある」

「カ、カール公爵」

 エリーゼは、恐怖でガタガタ震えていた。

「大丈夫ですか?」

 メイドに心配された。

「こっちに来て下さい、エリーゼさん」

「い、いやよ」

「手荒な真似はしたくなかった。でも、仕方がないか……」

 カール公爵の後ろから、黒い服を着ている、二人の男が現れて、メイド達を取り押さえた。

「キャー」

 メイドの片方が悲鳴を上げた。

「ちっ、追手が来るぞ、エリーゼさんを捕まえて逃げるんだ」

 カール公爵は、力づくでエリーゼを連れ去った。



 悲鳴を聞いた。アルーとルシードは、急いで駆け付けた。

「どうしたのですか?」

「カール公爵が、エリーゼ様を力づくで連れて行ってしまいました。私達は、知らない男に拘束されていたので、助ける事が出来なくて……」

「「!」」

「エリーゼの命が危ない」

 アルーは、真剣にそう言った。

「そうだな」

 ルシードも頷いた。


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