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しばらくして、目が覚めると、目の前にアルーがいた。
「エリーゼ」
心配そうにこちらを見ている。よく見ると、手をつないでくれているようだ。なんだか恥ずかしかったので。
「ア、アルー」
エリーゼは、照れて真っ赤になった。
「ごめんなさい、カール公爵に目を付けられてしまって」
「仕方がない事だ。それと、エリーゼ、僕に照れる必要はないぞ、見ろ、メイド達が楽しそうにうわさしているぞ」
「エリーゼ様は、やっぱり」
「ですよね」
ニヤニヤしてこちらを見ている二人のメイドがいた。
「あ、あの~」
ここで否定しても信じてもらえないと思い、ため息をついた。
(アルーは、恥ずかしくないのかしら?)
アルーの顔を見つめたが、恥ずかしさなど、みじんも感じていないように見えた。
「エリーゼ、意識が戻ったなら、何か食べようぜ」
「は、はい」
エリーゼは、頷いて、少し下を向いた。
(アルーは、アントナイトなのに、ドキドキするなんて、次期女王としては、失格な事ですわ)
エリーゼは、心の中でそう思い一人沈んだ。
「元気ないな、エリーゼ、まだ怖いか?」
「えっと……」
(怖い? カール公爵の事ね)
「もう大丈夫、元気になったよ」
空元気でそう言うと、アルーは、顔を近づけてくる。
(えっ、ええ~)
「熱は無いな」
額をくっつけただけだった。エリーゼは、驚いて損したと思ったが、内心は、ほっとしていた。
(これ以上、アルーの事好きになっちゃだめよ)
「元気がない時は、背中を押すといいって言っていたな」
アルーは、そう言って、エリーゼの背中を優しく押した。
(そう言う意味では、無いと思うけど……)
撫でるように背中を押すアルーに心臓がドキドキしていた。
「エリーゼ、元気になったか?」
「うん」
エリーゼは、笑顔を浮べ頷いた。アルーがあまりにも元気づけてくれるので、何だかうれしくなったのだ。
その後、アルーは、ベッドの横に立ち、様子を見ている。
食事が運ばれてきた。
ヴィシソワーズスープに、焼きたてのパン、パプリカサラダと言う、シンプルな物だった。
「まず、僕が食べる」
アルーが、毒味をしてくれている。
「うん、大丈夫だ。カール公爵は、毒を入れていない」
「アルー、もし、毒が入っていたらどうするつもりなの?」
「アントナイトに毒は効かないぞ」
「そうなの」
エリーゼは、少し、アルーを失う恐怖が頭をよぎったのだ。
(アルーがいなくなるなんて、嫌だと思ったわ)
そこにルシードが遊びに来た。
「エリーゼ様、体調を崩されたと聞き、エリーゼ様の好きな、いちごをいただいてきました」
「本当、ルシード」
「ルシードさん、まだ、あきらめていないんですね」
「アルー、お前は、アントナイトなんだろ、だったら、身を引け」
ルシードが嫌味にそう言う。
「ルシードさん、その通りなのかもしれません。でも、アントナイトは、一番に主を守るのが仕事です。側にいないのは、契約違反です」
「そ、そうか」
アルーとルシードが話している時、エリーゼは、いちごに手を伸ばそうとしていた。
「ルシードさん、あのいちご、誰から頂いた?」
「カール公爵ですけど」
「エリーゼ! そのいちごを食べてはいけない」
アルーが、バスケットを取り上げた。
「やはり、毒が入っている」
アルーは、いちごを食べながらそう言った。
「まさか、ルシードさんまで利用するなんて、悪魔過ぎる、あのおっさん」
「どう言う事なんだ? アルー、説明してくれ」
ルシードは戸惑っている。
「ああ、カール公爵が、ついに動き出したんだ」
「カール公爵が?」
「国を売るつもりらしい、それが、エリーゼにばれている事がばれて、命を狙われているんだ」
「そうだったのですか」
「うん、そうなの」
エリーゼは、仕方ないので頷いた。ベッドから起き上がり、パンを食べた。
「それじゃあ、警備は厳格な方がいいな、俺も警備に加えてもらう」
ルシードは、そう言って、エリーゼの手を取った。
「ご安心下さい、エリーゼ様、きっと、守って差し上げます」
「よろしくね」
エリーゼは、パンを飲み込みそう言った。
「しばらく、仮病を使うか」
「そうなるな」
「あの~、お手洗いに行きたいのですけど」
「は~、どうするべきだ?」
ルシードが困っていると。
「メイド達と行ってきなさい、決して、一人になってはいけませんよ、もし、カール公爵がいたら、すぐ大声を出せ」
「はい」
エリーゼは、メイド達とトイレを目指した。
すると、カール公爵とばったり会ってしまった。
「エリーゼさん、お前に用事がある」
「カ、カール公爵」
エリーゼは、恐怖でガタガタ震えていた。
「大丈夫ですか?」
メイドに心配された。
「こっちに来て下さい、エリーゼさん」
「い、いやよ」
「手荒な真似はしたくなかった。でも、仕方がないか……」
カール公爵の後ろから、黒い服を着ている、二人の男が現れて、メイド達を取り押さえた。
「キャー」
メイドの片方が悲鳴を上げた。
「ちっ、追手が来るぞ、エリーゼさんを捕まえて逃げるんだ」
カール公爵は、力づくでエリーゼを連れ去った。
悲鳴を聞いた。アルーとルシードは、急いで駆け付けた。
「どうしたのですか?」
「カール公爵が、エリーゼ様を力づくで連れて行ってしまいました。私達は、知らない男に拘束されていたので、助ける事が出来なくて……」
「「!」」
「エリーゼの命が危ない」
アルーは、真剣にそう言った。
「そうだな」
ルシードも頷いた。




