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そして、大会が始まる前、子供達が大勢並んでいた。高級そうな服を着た子もいたが、ボロボロの服を着た子も多かった。
カール公爵も観に来ていた。カール公爵は、髪は茶髪で、きれいに整えられている茶色いひげが印象的な、五十代の色男。
「アルー、カール公爵をマークして」
「わかった」
アルーは、アリほど小さくなって、公爵の近くへ行った。
(これなら、ばれないで情報を集められる)
エリーゼは、パンを食べる子供達を見下ろして、手を振っていた。
「みんな、がんばってね」
エリーゼは、優勝するのは、街の子供だとわかっていた。だが、それは、問題ではないのだ。一人でも、お腹いっぱいになって欲しいそれだけだった。
ラジオのリポーターが、行列を見て、エリーゼをほめていた。
『こんなにたくさんの人のパンを用意してくれるなんて、エリーゼ様は、太っ腹ですね』
物珍しさから、大人も大勢集まっていた。屋台が出て、繁盛していた。
(すごい、すべてうまく行っている)
『では、まず、一組目、メアリーちゃん、トム君、レスリーちゃん、ジョン君、フランソワ君です』
受け付け順で、五人一組で、競い合う、最終的に一番食べた子が、優勝だ。
『フランソワ君、もう三〇個目だ~』
フランソワと呼ばれた子は、体が大きく、とてもよく食べそうだった。
(彼が優勝かしらね)
エリーゼは、暖かい目で見つめていた。
パン二つでお腹いっぱいになってしまう子がとても多かった。それは、普段食べていないのに、急にたくさん食べられないからだろうと思い、余ったパンを配ってあげようと思った。
エリーゼは、カール公爵を一瞬見た。涼しそうな顔で笑っていた。
(あの人、すごいペテン師ね)
エリーゼは、心の中でそう思った。
『拍手です』
放送で、そう言ったので、すかさず拍手をしてごまかした。
☆ ☆ ☆
そして、大食い大会は終わり、エリーゼは、フランソワ君に、花を贈っていた。
『優勝のフランソワ君にインタビューします』
エリーゼは、にっこり微笑み、立っていた。
「毎日たくさん食べているから、あの位楽勝だよ」
フランソワは、迷惑そうにそう言っている。
(この子は、苦労知らずなのね)
エリーゼも、この子の態度は、少し気に喰わなかった。しかし、市場は、賑わい、親子連れの人達は、楽しそうである。
(うまく行った)
エリーゼは、生まれて初めて、自分の意見でしたことをみんながほめたたえるので、うれしくなった。
☆ ☆ ☆
そして、その夜、眠ろうと思いベッドに入った。
「エリーゼ」
「う~ん、アルーの声……」
「そうだよ、アルーだ」
少し目をパチクリした。アルーが目の前に立っていたからだ。
(ドアを閉め忘れたわけでもない……)
「よば……」
「夜這いじゃないから」
アルーは、困った顔してそう言った。
「カール公爵の陰謀がわかったぞ」
「えっ、本当!」
「この国を売るっていうのは、この国を隣のラカシア王国に戦争で負けさせて、付属国にする事だったんだ」
「えっ、でも、それじゃあ、カール公爵も不利なのでは?」
「あいつは、ラカシアに情報を漏らしている。つまり、スパイだ。そして、ラカシアで、公爵の力をさらに強めようと思っているらしい」
「……この国を戦争で負かす」
「カール公爵なら、兵士に毒を盛ったり、戦略をばらしたり、たくさんの死者を出す方法で戦いを混乱させるかもしれない、どうする、エリーゼ」
「直接言うわ」
「ばかか、直接言っちまったら、情報が漏れたことがばれちまう」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「カール公爵に自白させるんだ。王の前で」
「そんなことできるかな?」
「やってみろ」
そう言ってアルーは、アリほど小さくなって、出て行った。
(あら、便利)
ドアのすき間から、出て行ったのだ。
エリーゼは、一生懸命、カール公爵を自白させる行動を考えた。
(やっぱり、ガツンと言ってやるべきよ)
エリーゼは、そう思い眠った。




