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アントナイト~蟻ほどの騎士~  作者: 花言葉
ただいまアーヌスト王国
23/33

 三時間後、午後一時、アーヌスト王国に馬車が着いた。久しぶりに見る、アーヌスト王国は、とても賑やかだった。

「三千に負けてくれよ」

 仲介さんと商人が交渉しているようだ。

「わかった。三千二百これ以上は負けられない」

 エリーゼは、懐かしく感じる王都を見つめて、うろうろしていた。

「ねえ、アルー、あれ、何かしら?」

 エリーゼの前にあるのは、頬袋にひまわりの種を入れ過ぎたハムスターだった。

「えっと、これ、何の生き物だよ、膨らみ過ぎだろ! と言いたいが、膨らむのは、ハムスターかリス位で、この模様は、ハムスターだな」

「なんで膨らむの?」

「必死で食べ物を守っているんだよ、頬袋なら誰もとれやしないだろ」

「なるほど、この子飼わない?」

「あのな、僕、アントナイトなんだよ、こいつに踏まれるかもしれないと思うと、賛成出来ない」

「ふ~ん」

 エリーゼは、つまらなさそうにアルーを見た。

「必死で食べ物を守っているのは、ハムスターだけじゃないぞ」

 周りを子供に囲まれていた。

「食べ物を置いて行って、お腹が空いた」

 よく見ると、子供達は六人いる。とても、みすぼらしい恰好だったので、捨て子だろうと思い。

「じゃあ、このハムスターみたいに、たくさん食べなさい」

 エリーゼがそう言うと、子供達が首を傾げた。

「エリーゼ、まさか、何か企んでいない?」

「うん、企んでいる。とってもいい事」

 六人の子供達を連れて、城へ向かった。

「お父様、待っているかな~」


  ☆ ☆ ☆


 城の前に着くと、門番がルシードとエリーゼだけを中に入れると言い出した。

「アルー、子供達を頼んだ」

「はいはい、ガキのおもりなんて、やってられないけど、エリーゼの頼みじゃ仕方ないな、しっかり決めてこいよ」

「うん」

 エリーゼは、手を振って中へ入って行った。

「エリーゼ~!」

 大声を出して迎えてくれたのは、王様だった。ルシードは、王様の姿を見て下がった。

「お父様、今は、感動している場合ではないわ、外の子供達に、たらふく食べさせてあげたいの」

「? エリーゼ、何だ?」

「子供対抗、パン大食い大会を開こうと思うの、酒場で見て、いいと思ったの。参加費は無料、優勝者には、賞金を出しましょう」

「パン大食い大会?」

「人も集まるし、子供達もお腹いっぱい、いい案でしょう」

「でもね、エリーゼ、すぐには出来ないだろ、人を集めなくちゃ」

「そうね、ラジオで宣伝してもらいましょう」

「エリーゼ、自分で意見を言うなんて、すっかり女王らしくなってしまったな、もう、何も知らないお姫様とはいかないな」

「そうでしょ」

 エリーゼは胸を張った。

「私、世界を見て、いろいろ知ったの、貧困や、奴隷商、初めて見るものだらけだった。だから、この国を変えなくては、と思ったの」

 エリーゼは、真っ直ぐに王様を見つめ言った。

「だがな、エリーゼ、私も手は尽くしているのだよ。それでも、出来ない事はたくさんあるんだ」

「私は、私のやり方で変えて見せるわ」

 王様は、目を見開いて。

「そんな、簡単な事ではないんだ」

 怒りを少しこめてそう言った。

(お父様が怒ってらっしゃる、もしかして、私、今、大変な事を言ってしまったのかしら?)

 エリーゼは、少し、考えた。私なら出来ると主張してしまったのなら、お父様は、無能と言っているのと同じだ。

「お父様、決して、お父様がやっている事が足りないと言っているのではなく、今回みたいに、大食い大会を開こうと考えられるのは、私ならではの考えだと思ったの」

「確かに、私では、大食い大会など思いつかないな」

 王様は、少し顔がゆるんだ。

「エリーゼ、エリーゼのアントナイトを紹介してくれ」

「はい」

 門の外にいた、アルーと子供達は、中へ通された。そして、王様の前にアルーは跪いた。

「王様、私が、アントナイトの、アルー・アントです」

 アルーは、今までで一番ナイトらしいポーズをとった。

「エリーゼに、この国の事を教えたのは、お前だな」

「はい」

「優秀なアントナイトの様で、安心したぞ」

「お褒めに預かり、光栄でございます」

「エリーゼ、よさそうなナイトじゃないか、これからも仲良くするんだぞ」

「はい」

 エリーゼは、城を出て、屋台のパン屋を手当たり次第当たって、買い占めていた。

「今、何個ある?」

「三五〇個」

 ルシードに運ばせながら数えてもらった。

「もう少し必要ね、がんばって集めましょう」

 エリーゼは、張り切って、走り回っていた。

「エリーゼ様、ご帰国なさっていたのね、パンを作ればいいのかしら?」

 茶髪に白いコック帽子をかぶった。長身の女性が声を掛けて来た。

「ええっと、パン屋の人?」

「いいや、料理長のアリッサだよ」

「料理長って女だったんですね」

「エリーゼ様のために、パンをこねるよ、ついてきな」

 城の調理器具は、とても立派だった。オーブンも、大きく、レンガで出来ていて、三〇人分位は、作れそうだった。

「これで、一気に焼くのさ」

 アリッサは、長い髪を一つに結って、コック帽をかぶる。

「エリーゼ様、パンをこねるので、離れていてください」

「お手伝いします」

「ああ、困ったね、エリーゼ様、パンを作った経験はありますか?」

「ありません」

「素人がやると失敗するから、急いでいるみたいだし、やめた方がいいよ。調理場をうろうろするのも、邪魔だから、エリーゼ様の出来ることをやって下さい」

「出来る事?」

 エリーゼは、自分が役に立たないことを思い知って、ばばさまが言った。その人によって適材適所があると言う言葉を思い出した。

(アリッサには、パンは作れても、人を集めることは、出来ない)

 エリーゼは、チラシを持って人が集まる場所を探した。

(どこがいいかしら?)

 子供が集まる場所? 学校、公園、でも、あの人たちは、とても裕福だものね。そうなると、孤児院ね。

 駆け出して、行こうとすると、アルーが現れた。

「エリーゼ、どこに行く気だ」

「孤児院」

「まあな、孤児院には、お腹を空かせた子供がたくさんいる」

「だから、行くのよ」

「僕も行く、エリーゼ一人じゃ危ない」

「守ってくれるの?」

「もちろんです」

 アルーは、ナイトっぽく言った。

 二人で、滅多に行かない、裏路路地にある孤児院へ向かうと、子供達が大歓迎で迎えてくれた。

「エリーゼ様だって」

「エリーゼ様、こんな裏路地まで来てくださって」

 女の人が出迎えた。

「今日、パン大食い大会があるの、ぜひ、参加して」

「でも、料金が、払えないわ」

「無料ですよ」

 すると、女の人は、ポカンとした顔をした。

「みんなにお腹いっぱい食べさせてあげられるのね」

「ええ」

 エリーゼは、得意になって笑った。

 帰り道で、人を見る度チラシを配った。


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