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その夜、祠に足を踏み入れた。辺りは、暗くて、水が満たしてあり、真ん中に玉が置いてあった。
「あの、丸い石?」
「ああ」
「では、手をのせるが良い」
エリーゼは、心の中で強く祈った。光ってくれと。
「光った!」
青かった玉は、赤く光っている。
「アルーとの関係は良いとしよう、でも、まだまだ試験はある。エリーゼ少し休むが良い」
ばばさまにそう言われて、宿に向かった。部屋は、質素だったが、木のベッドがあり、眠るのにはよさそうだ。
「エリーゼ様、どうでしたか?」
ルシードが心配そうに訊いてくる。
「大丈夫だった」
「さすが、エリーゼ様」
そこにアルーが入って来て、ふざけた様子で。
「よろしくね、エリーゼ」
「うん」
「僕の能力見て置く?」
「うん」
アルーがぐんぐん小さくなって、点位の大きさになった。
「すごいな」
「私もばばさまに見せられた時は、驚いたわ」
「服はどうなっているんだ」
「縮むのだそうよ、理由はわからないけど」
「小さくなれるっていうのは、何もアリのサイズだけではないんだよ、一〇〇センチぐらいの子供サイズにも慣れるし、五〇センチ位の背にもなれるんだ」
アルーは、体をぐんぐん小さくさせたり大きくしたりして見せた。
「すごーい」
「そうだろ」
調子に乗っていると、アルーは深刻な顔つきになった。
「アントナイトの本当の使い方は、情報収集なんだ。体を小さくして、ドアのすき間から、会議室に潜入したりして、内容を主人に伝える。その情報を生かすか殺すかは主次第、アントナイトには、何の権限もないのさ」
「つまり、アントナイトは、世界を救う魔法の騎士ってわけじゃないのね」
「ああ、そうだ。でも、考えて見ろ、情報を手に入れるってどういう事か」
「……そうね」
(もし、こちらに不利なことを話していたら、防げるのよね?)
「いいことよね」
「アントナイトは、あくまで、万能じゃない、主人の力が一番大事なんだ」
「そ、そう」
(私に、しっかり使いこなせるかしら?)
「そんで、その見極める力を確かめる試験がこれからある」
「ええ~」
「でも、大丈夫、エリーゼのこと信じているから」
「そういえば、エリーゼって呼び捨てで呼んでいるな」
ルシードが不満そうに言った。
「これからは、バディなんだ。相棒は呼び捨てに決まっているだろう」
「そ、そうだね」
エリーゼは、少し戸惑っていた。
(バディか……)
これからは、アルーを好きになっても伝えては、いけないのだ。それが国のためになるのだから。
(私は、アルーが好きなのかな?)
少し、アルーを見つめた。
(確かに、格好いいし、優しいし、気が効くし、ピンチの時は側にいてくれるし、好き? まさかね?)
でも、実は、エリーゼは、そう思い込もうとしていることに気が付いていた。
(まさか、アルーの事好きなわけないわ)
エリーゼは、心の中で、冷や汗を流した。
(アルーのためにもそうでいなくちゃ)
ルシードとアルーが何か話していたが、全く聞こえなかった。
「それで、エリーゼはどう思う?」
「えっ? 何?」
「聞いてなかったの? ルシードさんをこれからどうするかって事」
「ルシードが何かしたの?」
「一応、この村の記憶だけ消してもらった方がいいかって事」
「あっ、そうね」
「エリーゼ様とアルーだけの秘密にする何て嫌です」
「エリーゼ、どうする?」
「ルシードは、口が固いから消さなくてもいいんじゃないかな? 一人くらい知っている人がいた方が、もしもの時、いいじゃない」
「エリーゼがそう言うなら」
アルーは渋々認めた。
「それじゃあ、おやすみ、僕は、隣に住んでいるから」
「ええ~どんな家?」
「質素な家と言う言葉がぴったりな家だ」
「遊びに行っていい?」
「だめだ」
「何で? 見せられないものでもあるの?」
「ああ、そうだよ」
エリーゼは、アルーの言い方が切なかったので、家に行くのはあきらめた。
「おやすみ」
エリーゼの部屋から、二人が出て行った。そして、明かりを消して、木のベッドに寝転んだ。
(『恋仲になってはいけない』か……)
エリーゼは、少しさみしい気持ちで天井を見つめた。




