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アールサン山に着くと、前来た時よりも枯葉が散っていた。
「山登りなんて久しぶり」
「あの時は、セリーヌと言うメイドと一緒だったが、今日は、アルーが一緒、なかなか二人きりにはなれないものですね」
ルシードがそう言ってふざけている。
「ここから先、この山のふもとに、アント一族が住んでいる。ただし、他人には、絶対に教えてはいけない」
「う、うん」
山のふもとに着くと、小さな村があった。
「アルー、ここ?」
エリーゼが、アルーに近づこうとしたその瞬間。
「アルー」
かわいい女の子が手を振っている。
「おう、レイクティア元気にしていたか?」
「もしかして、アルーの恋人?」
「いや、ただのお隣に住んでいる幼馴染だよ。一応言っておくけど、僕、アント一族の者なんだよね」
「「ええ~」」
ルシードと二人で驚いていると、次々と人が出てくる。
「あなたが新しい主候補?」
ルシードに向かってそう声をかけるおばさんがいた。
「そっちはおまけだよ、こっちのお嬢さんが主候補ね」
アルーはウインクしてそう言った。
「まあ、女の子なの?」
おばさんは困ったような顔をしていた。
(なんで? 女だとだめなのかしら?)
「一体、何事だ! 騒がしい」
後ろから、白い髪の毛の老婆が出てきた。首にじゃらじゃらとした飾りをつけている。
「ばばさま」
みんな、頭を下げて、ばばさまを囲む。
「う~ん、さては、人間が迷い込んだのか? それとも、新しい主候補でも連れて来たのかい?」
「主候補を連れてきました。ばばさま」
アルーは、大きな声でそう言った。
「そちらの男、どこの国の王子だ」
「俺は、エリーゼ様に仕えるナイトです。主候補だと言うのなら、こちらにいる女性ですよ」
「なっ、なんだと!」
ばばさまは、驚いて大声を上げた。
「今まで、アントナイトは、男にしか仕えない騎士だったと言うのに……」
「!」
エリーゼは、全く知識がなかったので、主は、男しかなってはいけないと言う事を知らなかった。
「アルー、じゃあ、アントナイトに私は最初から選ばれないって事?」
「いいや、そんな事は無い、この子は、アーヌスト王国の姫だ。アントナイトを受けられるのは、王族と言う決まりしかなかったはずだぞ」
「確かにそうだが……」
ばばさまは、言葉に詰まる。それも無理はない、アントナイトの村での、暗黙の決まりで、女は、主にしなかったのだ。
ばばさまは、眉間にしわを寄せて。
「そこの女、来なさい」
「はい」
ばばさまのとても小さな歩幅に合わせて付いて行くと、王座のようなイスが置いてあった。ばばさまはそれに座った。
「それで、アーヌスト王国の姫、名はなんという」
「エリーゼ・アーヌストと申します」
「そうか、エリーゼか、いい名だ。アルーをアントナイトにしたいのだな?」
「えっと、アルーがアントナイト?」
「まさか、教えずにつれてきたのか、あの男」
ばばさまは、体を小さくさせて見せてくれた。ぐんぐん縮んで、点の様になってしまった。
「どうだ。これが、アント一族の力だ」
「すごい、本物だ」
ばばさまは、すぐに大きくなり、杖を持って立ち上がった。
「どうじゃ」
「服ってどうなっているんですか?」
「縮むのじゃ、アント一族は、服を縮ませる力を生まれ持って備えているんだ。王族に仕える者として生まれてくるのだから、正装するのは、生まれた時からの運命なのかもしれないな」
ばばさまも、なぜ縮むのかは、わかっていないらしい。
「それで、嬢ちゃん、アントナイトを仕えさせる条件の中に、恋仲になってはいけないと言う決まりがあるんだ」
「もし、破ったら?」
「簡単だ。アルーが首になるだけだ」
「……それって、一生会えなくなるんですか?」
「い、いや、会うのは良いんだ。だが、アルーは、アントナイトの力を失い、この村にも二度と戻れなくなる」
「どこで恋仲と決まるのですか?」
「心の底から恋しいと思い告げる愛の言葉じゃ、『愛している』もしくは、『好きだ』と心から言うと、力がなくなるんだ」
エリーゼは、考えた。愛を伝えなければ側にいてくれるのだ。国のためなら、簡単な事だろうと。
「いいわ、うける」
「アントナイトの主にふさわしいか、いくつかテストを受けてもらう所だが、まず、儀式からだな」
「儀式?」
「アルーとの相性を見るのだ」
そこでアルーを呼ばれた。
「はい、ばばさま、呼びましたか?」
「ああ、わかっているな、相性を見る儀式がある事」
「はい」
「何をするの?」
「祠に行って、石に触れるのじゃ、そして、光ったら組んでも大丈夫と言う事だ」
「それだけ?」
「量られる物は二つだけじゃ、エリーゼの王族としての器量とアルーとの信頼関係が築けているか」
「わかりました」




