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そして、夜になり、宴が開かれた。
「エリーゼ様、踊りませんか?」
そう言ってくるのは、ドワーフだった。
「いいわよ」
半ば、エリーゼが持ち上げると言ったらいいのか、そう言うダンスになってしまっていた。
火の回りをぐるぐるとペアで回る。エリーゼは、たくさんのドワーフと踊った。
「エリーゼ様、俺と踊ってくれますか?」
ルシードが真剣な顔でそう言ってくる。いつものようにふざけた雰囲気じゃないので、少し戸惑った。
「えっと、いいよ」
「本当ですか?」
ルシードは、心の底から嬉しそうに言った。エリーゼにとっては、何でもない事だった。ドワーフと踊るのとほとんど変わらないと思っていたのだが、ルシードにとっては違うようだ。
(ダンスなんて減るものじゃないし、こんなに喜んでくれる人と踊らないわけには行かないよね)
エリーゼは、ルシードの手を取り踊った。
ドワーフは、笛や、太鼓を鳴らしてその場を盛り上げる。向かい合って踊っていると、ルシードの顔が良く見える。
(顔は良いのに、残念なのよね)
一曲が終わり、ドワーフも入れ替わった。
「アルー」
アルーの元へ向かうと、少しいじけているようにも見える。
「エリーゼちゃん、ちょっと来て」
アルーに連れて行かれた所は、月が良く見える庭だった。
「夜空がきれい」
一面の星空を木の間から覗く、そんな場所だった。
「キレイだろ」
「うん」
アルーは、自然と近づいて来て、手を握ってきた。
「踊りませんか? お姫様」
「ええ」
エリーゼは星空の下と言うシチュエーションで踊っているからなのか、とても、うっとりした気分になった。
(何だか、頭がボーとする)
アルーの顔も、かっこよくて、少しドキドキした。
(この気持ちは、何?)
初めての気持ちに戸惑っていた。そして、エリーゼが思ったのは、一時の気の迷いだろうと言う結論だった。
「ありがとう、アルー、とても楽しかったわ」
「そうか、女の子を楽しませるのも、僕の役目だからね」
頭を下げた。アルーがモテる理由が何となくわかった気がした。
(こんな人じゃ、好きにならないわけにはいかないよね)
エリーゼは、アルーと目が合い、そらしてしまった。
☆ ☆ ☆
ドワーフの所へ戻ると、食事会になっていた。
「エリーゼ様、どこに行っていたのですか?」
ルシードが心配そうに訊いてくる。
「う~ん、内緒です。ところで、私の分は?」
「当然あります」
エリーゼとアルーの分として用意された物は、他のドワーフの物より二回り大きな皿だった。
「うん、この位なら、丁度いいや」
エリーゼは、スープを冷ましながら食べた。
「この、にんじんおいしい、じゃがいももおいしい」
「ドワーフは、野菜も育てているんじゃよ」
「そうなんですか」
エリーゼは、一口一口、かみしめて食べた。
☆ ☆ ☆
その日の夜、ルシードとアルーに挟まれて眠った。
「ナイトは、一時も離れない覚悟です」
ルシードが、一緒に寝るとしつこいので、アルーに隣に寝てもらったのだ。
次の日、旅立ちの日が来た。
「ドワーフさん達、よくしてくれて、ありがとうございます」
エリーゼは、深々と頭を下げた。
「さあて、次は、どこに行こうか?」
「アルー、ドワーフは、アントナイトがどこにいるか知っていると言っていたわ、もしかして、もう情報を仕入れたのでしょう」
「わかっちゃったか~」
「当然です。あなたは、とても優秀ですから」
「買いかぶり過ぎですよ、僕は、優秀なんかじゃないですよ」
アルーは、風のように笑いながらそう言う。
(アルーってつかめない人だな~)
アルーを見つめてそう思っていた。
「次は、僕と初めて会った山に向かいましょう」
「えっ? なんで?」
「そこにアントナイトがいるのですよ」
「そう」
アルーの言った目的地は、アールサン山だった。山は、ここから東にある。大分馬車で進まないといけないのだ。
「また、乗合馬車?」
「そうだよ、エリーゼちゃんの嫌いな、乗合馬車だよ」
アルーは、呑気にしている。
「アルーは、慣れているのようね」
「うん」
エリーゼは、アルーが一体どんな生活をしてきて、情報屋になったか少し気になっていた。
(もしかして、何か特殊な家の出なのかしら?)
エリーゼは、歩きながら、悶々と考えていた。




