時代遅れのスタイル
「くそっ!」
宿に戻った俺は、部屋に入ると同時に盾を乱暴に投げ捨てた。重い鎧も脱ぎ捨て、ベッド上の座ってうな垂れる。
「俺は……役立たずなのか……?」
ついさっきパーティから追放されたことを思い出す。怒りや悲しみ、後悔や虚無感などが入り混じったような言葉では言い表せない感情に襲われていた。
俺はパーティの皆に貢献できるように頑張ってきたはずだ。なのにこの仕打ちはなんだ?
今まで努力してきたことは全て無駄だったのか?
3年間パーティの役に立てたと思ってたのは俺だけなのか?
俺みたいなタンク職はいつかはお役御免になる存在なんだろうか。薄々そう感じてはいた。だが認めてしまうと自分が今までやってきたことを全部否定することになる。だからなるべく考えないようにしていた。
他のパーティでは大きな武器を使う重戦士や、巧みに剣術を扱える剣士などの前衛が盾役代わりとなって活躍しているそうだ。
最近では敵の攻撃を避け続ける前衛も活躍していると聞いたことがある。こういうのは『回避盾』なんて呼ばれているらしい。
前衛のダメージが少なくなれば、ヒーラーの負担も減ることになる。なのでこういったスタイルの前衛は人気が高いようだ。
それに対し、俺は敵の敵対心を引き受けて被弾することを前提としたスタイルだ。
俺の持っている盾は、体の半分以上を庇えるほど大きい物を使っている。これほど大きければ大半の攻撃は対処できるし、複数相手でも防ぎきることができた。
だが全ての攻撃を防げるわけではない。敵の攻撃が激しくなると盾だけでは全て防御しきれないこともある。そういう時はどうしてもダメージを受けてしまう。
だけど俺なら耐え切れた。耐えてパーティを守るのが役目だからな。
けど他の前衛に比べると俺は攻撃面では劣ってしまう。基本的には後衛が倒してくれるからな。後衛が安全に攻撃できるように立ち回るのが俺の役目だ。だから火力が低くても問題なかった。
だけど……そういうスタイルはもはや時代遅れなのかもしれない……
俺が今までやってきた努力なんだったんだ……
ちくちょう……ちくしょう……
――駄目だ。考えれば考えるほど気分が落ち込んでいく。
今日はもう寝よう。これからのことは明日考えればいい。