「ねこ、恋、いかだ」
完全に練習用の作品なので、もし「こんなの読めるか!」と感じた方はブラウザバックをお願いします。
俺がダメ出ししてやんよ、という優しい方がいらっしゃいましたら、感想欄にてよろしくお願いいたします。
それではせめて一話くらい最後まで読んで頂けるようにがんばりますので、お時間がありましたらご一読よろしくお願いします。
「ねこ、恋、いかだ」
今日は天気がいい。僕は珍しく早く目を覚ますと清々しい青空を見て遠くへ行きたくなった。
気分の乗った僕は気付くと知らない電車に乗っていた。この電車はどこまで行くのだろう。
そんな気分で眺めていた窓から見える景色は、都会の色ばかり派手で直線ばかりのつまらない街並みとは違い、豊かな自然を残すのんびりとしたものだった。
そんな普段とは異なる風景に目を楽しませていると、だんだんと山に近付いているのがわかった。そうだ、今日は山に登ってみよう。
思い立った僕は気の向くままに降りた駅から山に向かって歩き始める。普段の固くまっすぐな道とは違い、少しでこぼこした土臭い道は僕を自然と山まで誘っていくようだ。
景色や匂いに気を取られていると、すぐに山に入ってしまった。都会の管理された嘘くさい木ではなく自然に伸びた大きな木、道を歩く者のことなんか考えず無造作に生える草たち、今が自分の人生で最高の時だと全力で訴えかけてくる色とりどりの花々。
山ってこんなにも生命に溢れていて、心に栄養を与えてくれるものだったんだな。そんなことを思いつつ、あてもなくふらふらと歩き続ける。
少し奥まで入ってしまっただろうか。そう思い始めた頃僕の耳は水音を捉えた。近くに川があるのだろうか。
好奇心に任せて水の音がする方へ歩いていく。するとそこには少し勢いのある小さな川が流れていた。
川の水は澄んでいてそのままでも飲めそうだ。しかし静かな印象はなく、強い流れがあちこちで音を立てながら絶え間なく水を下流まで運んでいる。
川を眺めているのも楽しそうだ。そう考えていると近くに同い年くらいの女性が同じように静かに川を眺めているのに気付いた。
「こんにちは、おひとりですか」
なぜこんなことを聞いたのだろう。今日は考えなしに行動していたせいかもしれない。
声をかけられた女性はこちらを振り向くと、はにかんだような笑みを見せつつ僕の問いに答えてくれた。
「ええ、そうですよ。今日は天気が良かったので少し遠くまで足を延ばそうと思っていたら、気付いたらここまで来ていました」
彼女はそう言って自分でも不思議そうにふふふっと笑っている。
僕はその返事に驚いて思わず言葉を続けた。
「本当ですか。実は僕もなんです。今日の晴れ晴れとした空を見ていたら、どこか遠くへ行きたくなってしまって」
こんなことを街中で話したら出来の悪いナンパにしかならないだろう。
だけど、今ここではそうはならなかったようだ。
「あら、それは面白い偶然ですね。もしかしたら他にも似たような人がいるかもしれませんね」
彼女は嫌そうな顔は見せずくすくすと笑っている。純粋にこの偶然を面白いと思っているようだ。
それに気を良くした僕は、そのまま他愛もない話を彼女と話し始めた。
彼女はここから少し離れた都会と田舎の入り混じったような街で暮らしていること。僕と同い年だったこと。普段は見慣れた場所で同じような日常を繰り返していることに心が疲れていたこと。
そして遠くへ出掛けることが心に新たな刺激を与えてくれたということ。
そんなことを川の流れを見ながら僕と彼女は話し続けた。
ふと彼女が会話を止めて、僕の方を向いて急に提案してきた。川の下流まで歩いてみないかと。この川がどんな風に流れていくのかを見てみたくはないか、と。
楽しそうだと思った僕はすぐに了承し、川沿いを二人でゆっくりと歩き始めた。
川は広さや深さ、傾きなどどこも同じ場所はなく、時には激しく、時には緩やかにその姿を変えつつ絶え間なく水を運び続ける。
そんな様子を歩きながら見ているだけで、とても楽しい気分になった。
少し歩くと幅が広くて流れが緩やかな場所があった。川が曲がるところには小さな枝や葉っぱが積もっている。そしてその中には僕たちが乗っても大丈夫そうな大きめの木も引っかかっていた。
気分が良くなっていた僕は特に考えもなしに彼女に提案した。あの木に乗って川を下ってみないかと。
最初は彼女は驚いて否定したが、実際に僕が木に乗ってみせてから、直接川の流れを味わってみたくはないかと重ねて訊ねると、少し考えた彼女は最終的に賛成してくれた。
多分彼女もいつもとは異なる非日常に酔い、頭がうまく働いていなかったのだろう。僕の方が重症だったみたいだけど。
僕は一度木から降りて、彼女を補助して先に木に乗せる。そして思いっきり蹴り出して木を川の中央側へと押し出してからそれに飛び乗る。
僕らの乗った木は最初はぐらついていたが、川の流れに沿い始めると緩やかに僕らを下流へと運び始めた。
言うまでもないがこんな経験は初めてだ。彼女もそうだったのだろう。川の内側から見える流れていく景色はとても僕らの目と心を楽しませた。
そうして初めての経験に気を取られていた僕らは、だんだんと川の流れが速くなっていることに気付けなかった。
景色の流れる速さが、周りから聞こえてくる水のぶつかる音が、僕らに警鐘を鳴らしていた。気付いた時にはかなりの勢いで僕らは下流に向かって流されていた。
木は川の中央付近を流れており、こんな不安定な場所じゃ岸まで飛び移ることは難しそうだ。揺れが激しくなってきたことを感じた僕らは木にしがみつく腕に力を加えた。
それからいくらか時間が経ったと思うが一向に速度は落ちない。景色が恐ろしい速さで過ぎ去っていく。
そんな状況に恐怖を覚えたのか知らない内に僕らは距離を詰めていた。彼女の右腕は僕を掴んでいる。さすがにこの状況で僕じゃなくて木をしっかり掴んだ方がいい、なんてセリフは言えない。その代わりに彼女までの距離を更に縮めた。
前を見ると少し先で川が大きく曲がることがわかった。これはチャンスではないだろうか。おそらくあそこで一度木は減速し、向こう岸に近付くはずだ。その時なら飛び移れるかもしれない。
彼女にそう説明すると、このまま流されるよりはそれに賭けた方が良いと賛成してくれた。
どんどん曲がり角が近づいてくる。僕らはいつでも跳べるように準備をし、その時を待つ。
そろそろだ。
そう思った僕は自然と重ねていた彼女の右手に左手で合図を送る。彼女も手に力を入れて合図を返してくれた。
そして曲がり角に差し掛かり、僕らの乗る木は減速していく。だがここで予想外のことが起きた。
木は少しずつ川の流れに合わせて進行方向を変えたが、曲がりきることができずに木の先端が岸にぶつかり引っかかってしまったのだ。
木の先端が岸にぶつかるという思わぬ衝撃で僕らは互いにしがみつくような形になっていたが、木が止まったので足を踏み外さないように気を付けながら急いで岸まで歩き、無事木から降りると汚れるのも構わず座り込んだ。
そこでお互いがしがみついていることに気付いた僕たちはバッと離れて、互いに赤くなっている顔を見合わせ笑い出した。
「あはははは。こんな経験初めてだ。怖かったけど怪我もなかったし、途中見れた風景も良かったし、やってみたのは正解だったかな」
そう笑い出す僕。それに彼女も笑いながら返してくる。
「あはは、そうかもね。川の流れがだんだん早くなっていったときはどうなることかと思ったけど、終わってみればすごくスリリングで楽しかったわ。二度目はやりたくないけどね」
最後の言葉に僕も同感だと返すと、また笑いが生まれる。
落ち着くまで笑い合うと僕らは立ち上がり、山の出口まで歩き出すことになった。
そして山の風景を眺めながら、僕は少しばかり緊張しながらも勢いに任せて彼女に提案した。
「今度また、こんな風に一緒に時間を過ごしてみませんか」
彼女は歩きながらこちらの顔を覗き込んでくる。顔は少し口角を上げているので何か楽し気なことを考えているのかもしれない。
そしてしばらく僕の顔を見た彼女は口を開いた。
「そっかあ。私は今日このまま一緒にいられると思ったんだけど、次回まで待った方がいいのね」
そう言って僕の反対側を向く。焦った僕は必死に先程の言葉を訂正する。
「ち、違うよ。僕もそう思ってたけど、いきなりは悪いかと思って、でももっと君と一緒にいたくて、その……」
しどろもどろになりながら言葉を連ねる僕の様子を、彼女は愉快そうに眺めてから笑い出した。
「うふふ、あはは。冗談よ。怒っているわけじゃないわ。それで、どうするの。次回まで待つか、それとも今日このまま一緒にいるか。私はどっちでもいいわよ」
目を輝かせた僕は彼女を見て言葉を口にする。
「もちろん今日も一緒にいたいよ。もっともっと、ずっと君と一緒にいたい」
その言葉に少し赤くなりつつも彼女は頷いてくれる。
こうして山で偶然出会った僕と彼女は今日、恋に落ちたのだった。
二年後にはかわいい仔猫たちも生まれて、僕らは幸せな時間を共に過ごすのでした。
*****
「ダメだな。ストーリーの流れはまあ考える時間が少なかったからこの際目をつぶるが、お題の三つのキーワードを成立させるための他の要素が多すぎる。
私が今回頼んだのはショートストーリーだ。いかだを使うため山へ行き川を下るのはまあ許せるが、都会から山まで行くところなんかはもう少し簡略化できるのではないか。
それと風景描写も心理描写もなんとか形にはしているがどちらも中途半端だな。短く話をまとめるにはもっと大胆に削ってみるのもアリだと思う」
同級生の言葉に僕はため息を吐く。
「そんなことを言われても、僕は小説なんて書いたことないし基本作法も知らない。
なのにいきなり三つのお題を満たすストーリーを書けなんてできるわけないだろう」
そう、僕はこの見た目美少年の同級生女子にとあることで脅されて、無理やり文芸部に入れられて文章を書かされたのだ。
恨みがましく彼女を見つめるが彼女はまるで気にした様子を見せずに話を続ける。
「小説は書いたことがなくとも、この高校に入学するまで小学生の頃から作文なんかは何度も書いてきただろう。
それに私はショートストーリーとしてのダメ出しはしたが、この話は結構好きだぞ。山へ行って開放的な気分になった男女が吊り橋効果で恋に落ちる。物語としてはベタだが書きやすくそれでいて効果的だからベタと言われるのだ。
猫でそれをやるというのも悪くはないし、最後までうまく隠せるのも小説ならではの手法だな。それに主人公が猫だからこそ人間社会のつまらない柵を考えずに安直なハッピーエンドになったのも納得がいく。
君の人柄が現れていて大変好ましい話だ」
素直に称賛されるのもそれはそれで恥ずかしい。それにこの程度の文章はきっと誰にだって書ける。多分僕が自力で書いたと思っているこの文章だってどこかで聞いた話を元に適当に書いたものにすぎないはずだ。
それを褒められるのは、達成感がないばかりか罪悪感さえある。
あと中学まで会ったこともない彼女がなぜ高校一年の春の今、僕の人柄について語れるのだろう。
彼女にとって僕は偶然脅迫ネタを持っていた憐れな獲物だと思っていたけど、もしや前から目を付けられていたのだろうか。だとしてもなぜ僕なのかというところがわからない。
そんなことを考えつつ僕は帰宅の準備を始め彼女に告げる。
「とにかく、今日の部活はこれで終了だろ。
それなら僕は帰るからね」
そう言ってかばんを持った僕は部室の扉に手をかける。
そこに彼女が声をかけてくる。
「おやおや、私はもっと君と話していたかったんだけどね。まあいい。それは三年間のお楽しみとしておくよ。
それじゃあ明日も放課後にここに来てくれ。待っているからな」
それを聞いた僕は彼女に振り返ることなく部室を出てまっすぐ自宅へと向かった。
はあ、僕の高校生活はどうなるんだろう。
僕は未来への不安を募らせながら家路を急ぐことにした。
主人公たちの名前や容姿はその内描写していきます。
お読みいただきありがとうございました。




