発症七日目
小便がしたくて目が覚めた。
何とかナースコールの釦を探す。
見つからない。何処に在るのかが分からない。
看護師が通りかかり、駆けつける。
「おしょこ?オムツ替える?」
私は首を振る。
「まだ、出てない?尿瓶だすね。」
尿瓶を取り出して、オムツにてをかける。
「おしっこに時間がかかります。」
「自分でする?」
ナースコールの釦を私に渡して、
「終わったら押してくださいね。分かります?」
頷くと部屋を出て行かれました。
文字に起こすと、流暢な答え方ですが、まともに聞こえてたのか不明です。
看護師さんの確認スキルが高いのだと思うのですが、患者の気持ちを察してくれます。
言葉にならない声も拾ってくれます。
今は感謝しますが、この時には感謝もありません。
やっと小便が出来ると、ナースコールの釦が見つかってほっとしたのを覚えています。
探してもないと思ったのが左手を上に伸ばせばあったのかと。
小便が終わりってオムツを履き、ナースコールの釦を押して、看護師さんに渡して起きたのでした。
朝の5時でしょうか。
しばらくして目を瞑ったら、また起こされました。
体温を計られ、名前、場所を聞かれて答えたり、聞き直したりします。
名前は言えました。思い出しました。
不思議な事に自分の名前が出てくると家族の名前も出てきました。
申し訳ないのは、弟、上妹、下妹の旦那と嫁さんの名前はでて来ませんでした。
次に起きたのはお風呂でした。
車椅子に座り風呂場に連れて行かれ、お風呂用の車椅子に乗り換えてシャワーで洗ってもらいます。
あがると拭いたあと、髪をドライヤーで乾かしてもらいオムツを新しいのと替えて入院服を着させてもらいます。
この間、私は申し訳ありません。ありがとうございます。ご迷惑をかけます。を繰り返し言ってました。
何も出来ない自分を分かってましたが、何が出来ないのか、どうすれば良いのかも分かりません。
しばらく目を瞑り、次に起こされた時は下妹がいました。私を見た下妹は、
「お兄ちゃん!起きたんや!ちょっと待っててな!」
と、出ていきました。
直ぐにお母さんが来て笑顔で話してくれます。
笑顔で頷きます。
話の内容には答えましたが、何かが分かりませんでした。
「家は大丈夫」、「みんな心配してた」、「よかった」
にたいて頷きと笑顔で返しました。
今なら理解できますが、この時は理解出来ません。
自分の言ってる事も不思議な感じでした。
お母さんは普通だったと言いますが、私は知った顔でお母さんで笑顔しか理解できず、会話の意味も分からないで答え、忘れたのです。
そう、この時の最大の怖さは、会話。
でも、リハビリでは会話こそ、大事なリハビリだと教えてもらいましたが、怖かったです。
そして今もそうですが、覚えていられない、記憶の欠如。
寝たら記憶がリセットされます。
ただ、目覚めた時の恐怖が怖かったです。
今はリセットは少なく、記憶力は何度も書いてもらい、それを見て覚えてます。
または、自分で書いて読んで覚えてます。
書いて覚えれません。
お母さんが帰ると寝ます。
次に目が覚めるのはトイレですから。
さて、此のように寝ています。寝るイコール疲れてるではなく、寝るイコール落ちる。
記憶も何もかも消されて起きるです。
お医者さんに聞くと脳にダメージがあるから、寝る行為とります。脳の修復の過程で寝るのが正解とか。
今も夢を見れなくなったのを実感してます。
本当に一つ一つの行為や行動に羨ましく思います。
私は元に戻る事が願いです。
何年掛かるか分かりませんが。
その時にはそんな感情もありませんでした。