第六話 魔法商女
間宮「引き続き経営取引会議を行います」
そう言うと間宮は手にしていたボールペンのキャップを外し、テーブルの上に置く。そして、一息吐き出して目を瞑った。
間宮「……己が優なるを知り、また己が身を律し、劣ならざるを敬愛せし者よ。
己が劣なるを認めず、また己が繁栄を欲し、優ならざるを侮蔑せし者よ。
調律せよ、調和せよ。己が非を認めざる優なる者よ。
己が優を軽んじる劣なる者よ。
祖は等しく、故に劣ならざる優無き者よ。
平等と誠実。十字架に括られし子等を見届けよ。」
詠唱と共にボールペンの先からインクが溢れ出す。そしてそれは宙に漂い、天秤の輪郭を形成し、眩い光を放った。
間宮「最後の天秤……ラ デーニアル バランサー!発動!!」
光の中から現れたのは間宮の倍はあろう大きさの真っ白な天秤だった。
真希「これは……一体…………」
真希は【魔法商女】の意味を履き違えていた。と言うのも魔法の存在自体に疑問を持つのは当然、先日の一件では目の前にある天秤のように視認できる変化は見られず、魔法を使ったかのように商談を纏め上げるプロフェッショナルであると言う認識でいた。
間宮「それでは、現在の二社の経営状況及び取引状況、御二方の意思の再確認を行います」
テーブルの上に置かれたキャップを拾い上げ、ボールペンに被せまた胸ポケットにしまい込む。
澤「ま、待ってくれ。その前に説明をしてくれないか。その天秤は一体なんなんだ!あんた達は一体何者なんだ!!」
取り乱し、青ざめた顔で怒鳴り散らす。
盛沢「……魔法商女…………そうですか。九条経営取引コンサルタントはやはりあの方の……」
澤「あの方……?盛沢社長、貴方は何かご存知なのですか?」
落ち着き払った様子で天秤を見つめる盛沢社長。そして、懐かしむような声色で説明を始めた。
盛沢「私がまだ若かった頃。先代の護澤鉄鋼の社長と経営取引会議を開いたことがあったんですよ。その時は経営協力の会議でした。ええ、今でも覚えています」
天秤から間宮に視線を移し、手元にあったバインダーを閉じた
盛沢「間宮さんと仰いましたね。続けましょう。貴女達には以前にもお世話になった。貴女達魔法商女なら安心して任せられる」
澤「待ってください盛沢社長!その魔法商女とは一体なんなんですか!?一体何をそこまで……」
険しい表情で問い詰める澤社長を一瞥し、ただ一言
盛沢「だいじょうぶ」
と吐き出す。
間宮「ありがとうごさいます。では、早速会議を進行させて頂きます。これからする質問には、一切の嘘偽り無くお答え下さい」
釘を刺す様に言い、そして再び口を開く。