第四話 紅茶と笑顔
間宮「はいもっと大きな声で!スマイリーーネゴシエーション☆」
真希「す、スマイリー・・」
間宮「もっと笑顔で!スマイリーー☆」
きっかけは真希の小さな疑問だった
間宮「ただいま戻りました。」
ドアが開く音と共に顔を覗かせたのは若い女性だった
間宮「貴女が円さんですね。初めまして、私は間宮智恵と申します。」
そう言うと、間宮は深く一礼した
九条「ちょうど紅茶が入ったところです。間宮さんも掛けて下さい。」
真希の時同様催促するように椅子を引く
間宮は椅子に腰掛けると、持っていた小さな紙袋を開け、ティーカップを取り出した
九条はそれを受け取ると、紅茶を注ぎ真希の前に差し出す
九条「ようこそ、円真希さん。」
そう言うと今度は置いてあった薄黄色のカップに紅茶を注ぎ、間宮に差し出す
間宮「ありがとうございます。」
九条は間宮の礼に対して笑顔で答える
九条「間宮さんはこれまでに何軒もの商談を纏めてきた実績ある魔法商女です。少しの間真希さんのサポートと指導役をして頂きますが、よろしいですか?」
再び出てきた魔法商女と言う言葉
真希は引っかかり続けていたこのワードに対する疑問をぶつける事にした
真希「あの、その魔法商女と言うのは一体・・・」
真希の言葉に驚いたような表情を浮かべる間宮
間宮「・・・私が説明させて頂きます。魔法商女とはそのまま魔法を使って商談を進める女性社員の事です。」
真希「魔法・・・ですか。」
騙されているのか、それともからかわれているのか
間宮の佇まいからはそのような事は感じられないのだが、鵜呑みにする事も出来ない
間宮「申し訳ありませんが信じて頂く他ありません。魔法を説明する事は私達にも未だに達成できていないのです。」
バツの悪そうな顔をしながら席を外し、ポケットからボールペンを取り出した
九条「彼女をしっかり見ていて下さい。歴戦の魔法商女が如何なるものか、自身の目で確かめて頂きたいのです。」
真希に目をやり、諭すような口調で言う
間宮「・・・いきます!」
間宮の真剣な表情に息を飲む
きっと今から自分の知り得なかった事が起こる様な気がしていた
間宮「利益とポスト、天秤に吊るされし悪を貫く!笑顔に繋がる愛の魔法☆届け!!スマイリーーーネゴシエーーーーション☆」
ボールペンを向けられた真希は、魔法にかかった様に動けなかった
九条「真希さん、貴女にも魔法商女の素質があります。ですが、それだけでは生き残る事はできません。」
背後にまわり、真希の肩に手を置きながら続ける
九条「間宮さんとマンツーマンで魔法を覚えて頂きます。貴女の素質なら一月、いえ二週間で魔法を扱える様になるはずです!」
真希は目の前が真っ暗になった