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第二十七話 邂逅


「貴女……城ヶ済さん……」


ふと顔を見やった先には、かつて自分が無し得なかった一切を引き継いだ後輩の姿があった。


「お久しぶりです。どうかなさったんですか?」


城ヶ済京香。以前親しくしていた後輩の登場は、真希にとってこれ以上無いほどに大きな一歩となった。


「城ヶ済さん。以前引き継いだ仕事の中に、沢衛材株式会社との取引会議に関する資料もあったわよね?」


焦りは真希の声を大きくした。しかし、それを自覚しトーンダウンさせるだけの冷静さもあった。

それでも、まくし立てるように問い詰める事しか出来ない。


「え、はい。あの、一体何が……」


いつでも優しく、むしろ甘ささえ感じていた先輩の険しい表情に困惑し、視線をそらす。

真希もそれに気付き、目をつむって深く息を吸って話出した。


「あの会議に……いえ、この会社でやらなければならない事が出来たの。もし会議が行われる日時が分かるなら教えて貰えないかしら?」


懐から名刺入れを取り出し、名刺を一枚差し出す。

[九条経営取引コンサルタント 営業部 円真希]と、書かれた名刺を見て城ヶ済はまた困惑の色を強くした。


「九条……? 先輩は他部署に転勤になっただけのはずじゃ……」


確かに他部署への転勤、出向にはなった。しかし、九条部長に拾われて、その後地方部署に退職届を出しに出向いて以降、盛際商社とは縁が無かった。


「説明はまた後でするから。もしかすると、この会社自体が危ないかもしれないの」


盛際商社に勤めていた時の信頼からか、今の真希が纏う雰囲気からか、それともただ知り合いであると言うだけなのかは分からないが、城ヶ済は首を縦に振った。


「会議はもう行われています。と、言っても先程始まったばかりですが。場所は、第二会議室で……」


城ヶ済の話を遮るように、ずんっ、と空気が重くなった。

そして真希と柿谷はそれが魔法によって引き起こされたものだと本能的に察知したのだった。


「第二会議室ね、ありがとう。柿谷さん!」


過去の後輩には目もくれず、フロントでIDカードを受け取っていた柿谷のもとへ駆けつける。


「案内するわ! 付いて来て‼︎」


警備員に来客用IDを提出し、早足に廊下を進む。

エレベーターを待つ時間さえ惜しみ、階段を二つ飛ばしに駆け上がり、三階の南側突き当たり。第二会議室へと向かった。


そして、バンと勢い良く扉を開けると、赤黒くくすんだ天秤と、見覚えのあるスーツ姿が佇んでいた。


「ッッ! 絶対珠算、発動‼︎」


その姿を視認すると、追い立てられたように柿谷は魔法を発動する。

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