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第二十一話 五人の魔法商女


びりびりと窓ガラスが揺れ、耳鳴りのような重低音が身体を突き抜ける。

黒い穴が消えた後もそれは止まず、しばらくの間部屋の中に充満していた。

「全く、なっちゃいないね。アンタも、そっちの若いのも」

左耳のピアスを終始弄くりまわしながら、嘲笑する様な目で二人を見回した。

「いきなり出て来て……あんたこそ何様のつもりだよ」

「怖い顔しなさんな。とって食ったりも、ここで喧嘩しようって気も今は無いよ」

噛み付かんばかりの形相で睨みつける柿谷を一蹴し、ラフに着崩したヨレヨレのスーツのポケットから小さな電卓を取り出した。

「あんたの魔法は、詰まる所デカくなっただけのコレだよ。初めての取引で発動させるだけのセンスはあるみたいだけど、それまでさ」

「なにが言いたい……」

「おつむが足りてないのさ。取引は算数じゃねーんだからさ。ただデカイだけの電卓で取引仲介人は務まらないね」

ぽーんと電卓を真上に放り投げ、仰ぎ見る様にして受け止める。それを何度も繰り返した後、今度は真希に向かって口を開いた。

「円真希……だっけ? あんたは真逆。おつむは足りてるけど、魔法商女としてのセンスはどうだろうね。あたしにしてみれば、ただの頭でっかちでしかない」

痛い所を付いてくる。事実、真希は固有魔法の発動に至っていない。今までの取引も、魔法商女と言うよりもただの商社ウーマンのやり方でこなして来たに過ぎない自覚があった。

「だがら……なんなのさ…………」

「あん?」

握り拳を震わせ、柿谷は朝倉を睨みつける。

「あんたには関係無い事だろ! どこの誰だかも名乗らないくせに、御高説垂れ流してんじゃねーよ!!」

ハッハッ、と息を荒げおもちゃのそろばんを投げつける。

朝倉はそれを受け止め、そっとデスクの上に置いた。

「ま、名乗らなかったのは失礼だったね。これで失礼するよ。ただ」

右耳のピアスに触れ、再びあの重低音が響き渡る。そして、朝倉の真後ろにまた真っ黒な穴が出現した。

「それは、アンタの魔法の媒介。アンタの誇りだ。粗末に扱ってやるなよ」

くるりと反転し、右手を振りながら穴の中へと消えて行った。

そしてまた、あの余韻の様な重低音が部屋を満たしていた。





「以上で、茶話森重工社、護羽叉製作所社二社による経営取引会議を終了させて頂きます」

部屋を満たしていた薄暗い光が消える。ボールペンのキャップを閉じ、胸ポケットにしまうと一礼をして会議室を後にした。

真希が入社する前の様に、一人で依頼をこなし、そして、今は真希や柿谷の待つオフィスへと歩を進める。

進める筈だった。

「どうして、貴女がここに居るのかしら?」

目の前に現れたのは、拠点を同じくする魔法商女、稲村の姿だった。

「こんにちは、間宮さん。早速で悪いのだけれど、貴女には伽耶岬支部を。いえ、魔法商女を辞めて貰うわ」


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