第二話 別れ 出会い
真希「転勤・・・ですか?」
昨日、日頃の恨みつらみを晴らしいつもよりずっと晴れやかな気持ちで出社して五分
濁りはまた大きくなった
森澤部長「昨日君が休んだ時にね、君の管轄でトラブルが起きてちょっと簡単にどうこう出来るような額じゃない損害を取引先に出してしまってね。先方もカンカンなんだよ。」
真希「で、ですが!」
森澤部長「君は優秀だからこんな事はしたくないんだけど、社のメンツもあるし、先方を立てなきゃならないからね。」
真希「・・・・はい・・」
軽い気持ちでとった行動
しかし自分はそんな軽率さを許される立場では無かったと深く反省する
そして同時に後悔と濁りが生まれた
その後、真希は帰宅を許された
一週間以内に転勤先への移住を済ませる事
そして仕事の引き継ぎを終わらせるため自宅管理している書類を纏める事
この二つを優先された
いつもに比べてずっと広い電車に乗ってボロアパートに帰る
午前六時
真希は眠れなかった
鳥の鳴き声も隙間風の音も感じない
しかし朝日を浴びると少しだけ前向きになったのが分かった
引き継ぎ用の書類を纏め、いつもより広い電車に乗って会社に向かう
引き継ぎはあっという間に終わった
本当に問題無く引き継げているのかは甚だ疑問ではあったが、真希はそのまま帰ってしまった
そのまま帰るはずであった
「君が・・・円さんだね?」
自分とそう歳の変わらないであろう男が会社のすぐ外で話しかけて来た
九条「私は九条と言うものです。こんな所で立ち話もなんですので、何処かでお茶でもいかがですか?」
爽やかな笑顔に誘われ、そして大きくなった濁りに後押しされ九条について行く
九条「アイスコーヒーでよろしいですか?」
真希「はい。」
入ったのは少し歩いた先の喫茶店
平日の昼過ぎに来るような客は殆ど居ない
九条「私、こう言う者です。」
そう言うと九条は名刺を差し出してきた
九条経営取引コンサルタント
営業部 部長 九条 望
聞いた事の無い社名
真希は一つ息を吸って身構える
九条「私共は御社の取引先である澤森電気機器と接点が有りまして、そこで貴女の事を耳にしまして。」
澤森電気機器
確かに自分が受け持った取引先の名前に間違い無い
九条「単刀直入に言うと、今回はヘッドハンティングのお話を持ってきました。」
真希「ヘッド・・・ハンティングですか・・・」
事実上のクビを言い渡されている真希には大きな助け舟になる
九条「そうです。円真希さん。」
九条は真希の手を取り、硬く握りしめる
九条「我が社と契約して、魔法商女になって頂けませんか?」