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第十九話 終幕


「二つ目に、恐らく新設ラインに割く人数にエラーが発生しました」


新規ラインに備え付けられる部品棚の経費と思われる計算式にエラーが発生していた。この事から推測されるのは、部品棚の値段に嘘があるか、それとも部品棚の数にあるかのどちらかだった。

部品棚の値段を多めに見積もっていたと言う程度なら後から領収書なりなんなりで決算する事になるため、エラーなど発生しないだろう。

そうなれば、答えは一つだった。


「もう一度、佐和森電工社様の提出した社員名簿と協定先への確認を行うため、会議は一度締めさせて」


「いいえ、その必要はありません」


真希の言葉を遮ったのは、稲村だった。


「社員名簿の確認と協定先、杜澤電気への確認は既に済ませてきました」


そう言うとポケットから付箋を取り出し、ボールペンで何かを書き始めた。


「その結果、先程彼女が推察した通り幾つかの虚偽報告がありました」


書き終えた付箋を剥がし、デスクに貼るとまた次の付箋に書き込み、剥がし、デスクに貼る。

そうして6枚の付箋を貼り終えた稲村は、付箋の塊をポケットにしまい直し貼り付けた付箋を纏めて引き剥がし、グシャグシャに丸め、片手で握り潰した。

握り拳を開くと付箋だった紙くずがこぼれ落ち、赤黒い炎を上げてその姿をA4サイズのバインダーに変えていく。


「これがその検証資料になります。円さん、貴女の予想は大方当たっています。佐和森電工社が協定していた杜澤電気の社員名簿と今回新規ラインに割り当てられる佐和森電工の社員名簿、それから先月行われた人事異動の際の名簿から推測されることは……」


すっ、と息を吸い、溜めをつくる。

バインダーを閉じ、再び視線を佐和森へと戻し、話を始めた。


「御社が新規ラインに配属する予定の社員38名のうち、約半数、20名の社員が杜澤電気の社員名簿に乗っている人物と一致しました。これから推測するに、新規ラインの始動からすぐにこれら20名の社員に辞職させ、人員不足を補うためと言う名目で両社から人員を補充する手はずだったのでしょう」


バインダーを真希に渡し、佐和森に詰め寄る。


「そうすれば雇用賃金の高い新規ラインに人員を割かずに済み、そして元からあった別の部署を最低限の人員削減で回し、出来る限り利益を自社に流し込もうと考えた。違いますか?」


うう……とも、ぐう……とも取れるような呻き声を上げ、佐和森は詰め寄る稲村から逃げるように後ずさりをする。


「円さん。絶対珠算を停止させてください。主導権が貴女に移っている今なら出来るはずです」


こちらを振り向くこともせず、そろばんを指差す仕草だけ見せて指示を出す。

そして真希もそれに応えるように電卓に手をかざし、目を瞑って意識を魔法へと向けた。


「それが停止出来たら、柿谷さんを連れてロビーに行ってください。そして、柿谷さんが目覚め次第会社に戻って部長に報告してください」


「ここからは私が片付けておきますから」


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