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第二十四話 奇襲

 真希達三人が三旗の家へ向かい歩いている頃、車で移動していた朝倉達にも異変が起こっていた。それは出発してから十数分ほど、制限速度を守って快調に車を走らせていた時に思い知る事になる。

「……やべーなこりゃ……」

「……道、迷っちゃいましたね…………」

 彼女達は入り組んだ住宅地を右往左往していた。

 悲しいかな助手席の間宮が持っている地図二枚のどちらとも違う地形を前に、なすすべもなく立ち往生する羽目になっている。

「四年で道まで変わっちまうなんてのはありえない。間宮が地図を読めないってんじゃ無けりゃ相当手間のかかったカモフラージュしてやがんな……」

「それでも急がないと……。先生達より先に到着しなくちゃ囮の意味が無くなってしまう」

 そう言うと間宮は地図二枚を折り畳み、胸ポケットから黒のボールペンを取り出してそのキャップを親指で弾き飛ばした。

「発動……【La derniere balancer】」

 バチッと静電気の走るような音とともに、間宮の左手の上には小さな小さな天秤が現れる。そしてそれは少しづつ左右に揺られながら平行を探るように佇んでいた。

「天秤を揺らし続けます。もし魔法か……魔女の力で偽装しているのならどこかで大きく傾くはず……」

 こくんと無言で頷き、朝倉は道なりに住宅地を突き進んで行く。番地を越え、町を越え、市外に出る直前まで行ってはまた少し軸をずらして戻って、そうしてしらみ潰しに九条社跡地と思われる近辺を走り回った。

 そしてその成果は突然表れる。

「——ッ! 京子さん!」

「発動、【Un de blanc comme neige】重ねて発現——」

 ぼうっと左耳のピアスが輝き始めると、それはすぐに溶け出して間宮の掌の上で天秤と混ざり合った。

 真白き輝きの龍はフロントガラスをすり抜け、何もない空間にその牙を突き立てる。そして轟音とともに世界を噛み砕くと、三人の前に絶望を映し出した。

「京子……さん…………?」

 広がっていたのは住宅街では無く荒野だった。並び生えていた人々の帰る場所は悪魔達だった。

 牙を突き立てたのは彼女達だけでは無かった。

「いらっしゃい間宮さん、柿谷さん。そして——」

 間宮の頬に飛び散り伝う暖かい感触と、柿谷の目の前まで迫った無数の槍は、喉と胸をひたすらに貫かれ座席に磔にされた希望の姿を蜃気楼のように掻き消そうとしていた。

「歓迎しますよ、朝倉京子さん」

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