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異世界に行った天才  作者: りゅう
プロローグ
1/2

辞世の句って憧れるよね

どうも、りゅうです。

まだ、小説を書くのに慣れていないので、お手柔らかにお願いします。

楽しんで頂けたら幸いです。

「死にました

 ああ死にました

 死にました」


・・・ふむ。

なかなか良い句じゃないか。

字足らずもないし、字余りもない。何より分りやすい。

最高じゃないか。

いや、待てよ・・・


「殺された

 ああ殺された

 殺された」


・・・

やっぱり『死にました』の方がいいな。

事故だし。殺されたって感じじゃないよな。

いやいや、待てよ・・・


「トラックで

 ()かれ殺され

 ここどこだ?」


うーむ、これも捨てがたい。

死因に加え今の俺の状況まで表している。優秀な一句だ。

どうするか・・・


「はっ・・・」


俺としたことが。季語を忘れていた。

いや、そもそも辞世の句に季語っているのか?


「・・・何をしているのじゃ?」


俺が首をひねっていると、後ろから声を掛けられた。

振り返って見てみると、黒いスーツを着た爺さんが立っていた。

見た目は70位だが、背筋は伸びていて凄まじい威圧感がある。

何か言っているが、俺には時間がない(かもしれない)。

なので、ひとまず爺さんの疑問はほっといて、俺の疑問に答えてもらおう。


「なあ、爺さん」


「な、なんじゃ」


「『殺され』って季語になるかな?」


「なるかっ!!」


・・・ならないのか。

俺的に秋の季語くらいになってもいいと思うんだが。


「お主、自分の状況が分かっているのか?」


爺さんが冷や汗をかきながら聞いてくる。

俺の疑問に答えてくれたのだ。今度はこっちの番か。


「空腹だ」


「誰が腹の状況を言えといった!!」


確かに腹の状況とは言われてないが、それならどこの状況を言えばいいんだ?


「憶えてないのか!?お主は車に轢かれて死んだのじゃ!!」


憶えている。

俺は車に轢かれて、気付いたらここにいたのだ。雲の上に。

そして、自分が死んだことを5秒で受け止めた俺は、いつまでここに居れるかわからないので・・・


「急いで辞世の句を作っていた」


「諦め良すぎじゃろ!!」


・・・元気いいな。この爺さん。


「ま、まあ、よかろう。自分の状況を把握しているなら、話も進めやすい」


そういうと爺さんは、一つ咳をして口を開いた。


「まず最初に謝っておく。申し訳ない!お主を殺したのは儂じゃ!」


そう言って、爺さんは深々と頭を下げた。

なんと、他殺だったか。

となると、『殺された』が第一候補になるな。

勿論、辞世の句の話である。


「すまぬ。いきなりこんなこと言われても訳が分からぬよな」


俺が難しい顔で(辞世の句を)考え込んでいると、何を勘違いしたのか爺さんが頭を上げてしゃべりだした。


「まず最初に儂の正体だが、お主の生きている世界・・・いや、お主が生きていた世界の神じゃ」


なるほど、大体話が見えてきた。

つまり・・・


「俺に新世界の神になれと?」


「違うわっ!!」


さっきまで、申し訳なさそうにしていた爺さんが、元気いっぱい叫んだ。

本当に反省してるのか・・・?


「はぁ~、もういい。勝手に話すぞ」


ため息を吐いて、爺さんは開き直ったようにしゃべりだした。


「本当はお主はあそこで死ぬ運命じゃなかったのじゃ。最低でもあと70年は生きる予定だったのじゃ」


70年となると、最低でも88歳まで生きる予定だったのか。

そこそこ長生きだな。


「それが儂のミスによって、早まってしまったのじゃ」


88歳生きるのを18歳で殺すって。一体、どんなミスしたんだ?


「本当に申し訳ない!!」


そう言って、爺さんは再び頭を下げた。

ミスか・・・


「・・・本当にミスなんだな?」


「あ、ああ。申し訳ない」


今までにない、俺の真剣な声に爺さんの顔に緊張が走る。

だが、俺はそれどころではない。

ミスということは・・・


「やっぱり『死にました』だな」


「は・・・?」


俺の言葉に爺さんの顔が呆然となる。

でも、そんなことは気にせず俺は満足げに頷いた。


「これが一番しっくりくると思ってたんだよな~」


「お主、何を言って・・・」


何をって・・・


「辞世の句の話だけど」


ミス。つまり事故だろ。

なら『死にました』で決定だな。


「お、怒っとらんのか?」


「ん?何が?」


怒るどころか、やっと辞世の句が決まって超ご機嫌だぞ。


「いや、だから儂がお主を殺したこととか・・・」


あ~、それね。

それを気にしてこの爺さん、さっきから謝ってたのか。


「わざとじゃないんだったら別にいいぞ」


俺には家族がいない。小さなころに交通事故で死んだのだ。

なので、俺が死んで悲しむ奴はあんまり・・・

そこまで考えて俺はハッとなった。


「爺さんまさか・・・」


「な、なんじゃ?」


「俺の家族もあんたが・・・」


「濡れ衣じゃっ!!」


なーんだ、違うのか。

もしそうだったら、神に殺された一家とか超格好良かったのに。

まあ、とにかく。


「怒ってないから、気にしなくていいぞ」


「じゃ、じゃが、儂はお主を・・・」


「だってミスなんだろ。誰だってミスはするだろう」


「じゃが、いくらミスといえども・・・」


「それに」


俺は、爺さんの言葉を遮って言った。


「あんたはわざわざ俺に謝ってくれた。それで十分だ」


「お主・・・」


「神様なんだからミスのことを言わず、俺を放って置くこともできたんだろう。それなのにあんたはこうして、俺の前に現れて頭を下げた。だから、俺はもう気にしてない」


「・・・・・」


俺がそう言うと、爺さんは泣きながら黙り込んだ。


「すまぬ・・・すまぬ・・・」


小さな呟きが聞こえてくる。

俺は爺さんが泣き止むまで、そっと見守っていた。






それからほどなくして爺さんは泣き止んだ。


「・・・恥ずかしいところを見せてしまったの」


照れくさそうに言う爺さんだが、さっきも言った通り誰だってミスはするし、泣きたくなる時もあるだろう。


「別にいいさ。それより、俺はどうなるんだ?爺さん直々に天国に連れっててくれるのか?」


俺がそう聞くと、爺さんは微笑みながら首を横に振った。

違うのか。となると・・・


「・・・地獄か?」


「さ、さすがにそこまで酷い神じゃないぞ」


爺さんが顔を引き攣らせながら言う。

じゃあ、どこに行くんだ?


「最初は特別待遇で天国に行ってもらうつもりじゃったが・・・」


天国にも特別待遇とかあるのか?


「お主と話して思った。お主にはまだ死んでもらいたくない。なので別の世界に行ってもらう」


別の世界・・・


「嫌か?」


爺さんが俺に聞いてくる。

答えなんて決まっている。


「面白そうだな」


「じゃろ!」


俺の答えを聞いて爺さんは嬉しそうに笑った。


「もちろん、これはお詫びも兼ねているので、色々特典を付けさせてもらう」


特典てなんだろう?

商品券とかかな?


「おっと、その前にお主が行く世界について説明せんとな」


爺さんがそう言って、右手を前にかざすと、虚空(こくう)からA4サイズほどの紙が出てきた。

なんだ?マジックか?

ミスターなマリックさんか?


「えーと、文明レベルはお主が生きていた世界より低いが、魔法がある」


爺さんが紙を読み上げていく。

なるほど、魔法か。


「魔法がある関係上、魔獣や魔人もおる。まあ、お主が生きていた世界のゲームと同じ感じだ」


なるほど、分かりやすいな。


「その他にもギルドなど色々面白いものがあるが、あとは行ってからのお楽しみじゃな」


爺さんがそう言って、紙を放り投げると虚空に溶けるように消えていった。


「どうじゃ?面白そうじゃろ?」


「ああ、良さそうな世界だな」


俺がそう言うと、爺さんは一つ頷いて、また新たな紙を虚空から取り出した。


「では、次は特典の選択に移ろう」


紙に視線を移した爺さんは口を開く。


「言語翻訳や基礎体力強化は当然として、儂の魔力を1割ほど分けてやろう」


「おいおい、大丈夫なのか?そんなにもらって」


俺は思わず口を挟んだ。

もし俺のせいで、爺さんに何かあったら嫌だぞ。


「安心せい。これでも儂は結構上位の神じゃ。1割くらいでどうこうなりはせん」


「そうか」


なら安心だ。

それにしても、そんなすごい神だったのか。この爺さん。


「さて、特典についてお主から希望はあるか?」


「そうだなぁ」


何にしようか。

ぶっちゃけ戦闘に関しては爺さんの魔力があれば、問題ないと思う。

だから、もっと色々なことに活かせる・・・

あっ、そうだ。


「なら、才能をくれないか?」


「才能?」


不思議そうな顔をする爺さんに説明する。


「たぶん俺は、向こうの世界で今までしたことのないような体験を、たくさんすると思う」


「ふむ」


「だから、挫折したりしないように多くの才能が欲しい」


俺の願いを聞いた爺さんは、笑って頷いた。


「なるほど、才能ときたか。お主は本当に面白いのう」


よく言われる。


「よかろう。お主に数多(あまた)の才能を授けよう」


爺さんはそう言って、俺に両手をかざした。

すると、俺の体が光りだす。


「・・・よし、これでお主は数え切れぬ才能を持つ天才となった」


光が止むと、爺さんが手を下げてそう言った。

だが、特に変わった感じはないが・・・

まさか。


「俺が既に天才だから・・・」


「・・・何を勘違いしているのか知らんが、何かを学ばんと、才能を自覚することはないぞ」


ちっ。わかってましたよ。そんなこと。


「まあ、何はともあれ準備完了じゃ。少し寂しいが転移を開始するぞ」


爺さんはそう言って、再び俺に両手をかざす。

だが今度は俺だけでなく、この空間全体も光りだした。

おそらくもうすぐ転移が始まるのだろう。

なので、俺は最後に爺さんに聞いた。


「おい、爺さん」


「なんじゃ?」


「・・・あんたの名前は?」


そう聞くと、爺さんは一瞬ぽかんとして、笑いだす。


「くくく、そうじゃったの。まだお互い名乗ってもいなかったの」


そう言っている間に、光はどんどん強くなる。


「儂の名はフィレムじゃ。お主の名は?」


「俺の名前か?俺の名前は・・・」


眩い光の中、俺は爺さん―――フィレムに向かって言った。


天野(あまの)才斗(さいと)だ」


それを最後に空間は完全に光に染まり、俺の意識はなくなった。

どうでしたか?

おかしな部分はなかったでしょうか?

気に入って頂けたら光栄です。

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